石川県金沢市・金沢港の近くに醸造所を構える「BREW CLASSIC(ブルークラシック)」。
ファーストリリースのビールで「Japan Great Beer Awards 2022」金賞を受賞し、さらに「WORLD BEER CUP」をはじめとする国内外の大会でも高い評価を得ている、実力派のクラフトビールブルワリーです。
今回は、「BREW CLASSIC」代表兼ヘッドブルワー・酒尾壮典(さかお たけのり)さんにインタビュー。ブルワリー立ち上げの背景から、ビールづくりのこだわり、タップルームに込めた想い、おすすめビールまで詳しくうかがいました。
金沢発の注目ブルワリー「BREW CLASSIC(ブルークラシック)」とは?

「BREW CLASSIC」は、石川県金沢市で誕生したクラフトビールブルワリーです。
液体酵母への強いこだわりを持ち、West Coast IPAやAmerican-Belgo、Hazy IPA、Saisonなど幅広いスタイルに挑戦。国内外のビールコンペティションでも受賞歴を重ねています。
2024年9月には直営タップルームもオープン。ビールの味わいだけでなく、空間づくりやラベルデザインにも夫婦ならではの感性が反映されており、金沢で注目を集めるブルワリーのひとつです。
ビアトラックから始まった。地元・金沢でのクラフトビールづくりと「BREW CLASSIC(ブルークラシック)」誕生までの道のり

石川県金沢市で生まれ育った酒尾さん。就職を機に横浜へ移住したそうですが、その後どのようにして故郷の金沢でブルワリーを立ち上げたのでしょうか。
——現在ブルワーとして注目を集めている酒尾さんですが、この業界に入るまではどのようなキャリアを歩んできたんですか?
酒尾さん:就職してから約10年間は横浜や東京で、クラフトビールとは関係のない半導体の商社やWeb系のベンチャー企業に勤めていましたが、「いつかは金沢に戻って起業したい」という漠然とした想いがありました。東京周辺は金沢よりもクラフトビールを取り扱うお店が多く、飲んでいるうちにクラフトビールの美味しさや面白さにハマったことを覚えています。
日本全国に小規模醸造所があることを知り、実際に足を運んだ際に「こんな小さな規模でもビールを造れるのか」と驚きました。もともとビールは好きだったものの、大手の銘柄しか知らなかったので、ビールを造るには大規模な工場が必要だと思っていたのです。
当時、まだ金沢にはブルワリーが少なく、もし地元でクラフトビールを造れたら面白いかもしれないという想いが芽生えました。
——なるほど、そこからビール業界に進出したのですか?
酒尾さん:いえ、その後金沢の企業に転職し、サラリーマンとして働きながらクラフトビールの移動販売を始めます。2019年の年末、ビールに関わる活動の第一歩です。
金沢のとあるブルワリーに、OEM(委託醸造)という形で私のオリジナルビールを造ってもらい、それをキッチンカーのようなビアトラックで樽生として3種類提供していました。
コロナの影響でビアトラックの活動は短期間で終了しますが、お客さんに「美味しい!」と言ってもらえる嬉しさと、OEMゆえに「私が醸造したビールです」と言えない悔しさを味わい、時間をかけてでも自分のブルワリーを持つ準備を始めようと思い立ちました。
——そこから「BREW CLASSIC」が誕生するまでの経緯を教えてください。

酒尾さん:オリジナルビールを醸造してもらっていたブルワリーでヘッドブルワーを務めていた方に、家庭教師のような形でビールづくりをイチから教わりました。さらに醸造未経験でも受け入れてくれる静岡県富士宮市のブルワリー「Mt. Fuji Brewing」を紹介してもらい、2か月ほど住み込みで研修させていただきました。
そして2020年の秋に醸造設備の発注や銀行への融資相談を始め、翌年の2月か3月にはブルワリーとして使用する物件の契約と酒類製造免許の申請。9月に醸造設備が届いたのち、クラウドファンディングでの応援も受けながら12月に初仕込みという流れです。設備は船で送られてくるのですが、タンクや配管などが全てバラバラの状態だったので、それをイチから組み立てる作業が大変でしたね。
——「BREW CLASSIC」というネーミングに関しては、どのような想いが込められているのですか?
酒尾さん:「BREW CLASSIC」には、「いつかクラシックと呼ばれるビールを造りたい」という想いを込めています。過去ではなく未来を見据えて名付けました。
10年ぶりに金沢に帰ってきたときに、街のお店がかなり入れ替わっている一方で、私が子どもの頃から残っているお店もありました。地元の人に長く愛され、残り続ける。そんなブルワリーにしたいという想いも、“クラシック”に繋がっています。
また、金沢に帰ってきたタイミングでサーフィンを始めようと思ったんですよ。ネットで調べた近くのサーフショップでウェットスーツを買ったものの、実際に海に入ったのは1回だけでした。日本海側のサーフィンといえば波が上がる冬なので、ウェットスーツを着ても寒くて寒くて…。
それ以来サーフィンはしていませんが、購入したウェットスーツのブランド名が「AXXE CLASSIC(アックス クラシック)」で、“クラシック”ってかっこいいなと思ったのも「BREW CLASSIC」にした理由の一つだったりします(笑)
——「BREW CLASSIC」として、はじめて醸造したビールは何ですか?
酒尾さん:West Coast IPAの「レッツ・ラ ホップ イーゴー」と、Hoppy Aleの「ヒツジノジョー アラウンド」を仕込み、クラウドファンディングのリターンとしてお届けしました。もともとWest Coast IPAが好きだったということもあり、最初のスタイルに選びましたし、今でも力を入れています。
「BREW CLASSIC」としてのファーストリリースは、3種目として仕込んだAmerican IPA「ハリコマチフリーダム」で、こちらは2026年2月に4周年エディションをリリースしたばかりです。
造り手になる前はビールを飲んでは色んな意見や感想を言う側だったので、はじめて自分のビールを世に送り出したときは喜びや達成感よりも、評価されることへの不安が大きかったですね。ただ、ファーストリリースの「ハリコマチフリーダム」が「Japan Great Beer Awards 2022」で金賞を獲得できたので、造り手としてもそこで自信を持てるようになりました。
いつか“クラシック”と呼ばれるビールを。受賞歴が示す実力「BREW CLASSIC(ブルークラシック)」ビールづくりへのこだわり

「BREW CLASSIC」は、権威あるビールの大会「Japan Great Beer Awards 2022」や「WORLD BEER CUP 2023」で金賞を獲得してきた実力派ブルワリーです。
「JAPAN BREWERS CUP 2026」では、Saisonの「サイリバー」が淡色エール部門で銀賞に輝いています。
——酒尾さんのビールづくりに対するこだわりを教えてください。

酒尾さん:一番のこだわりは、液体酵母を使用していることです。酵母は生物であるという観点から、乾燥させたものではなく新鮮な液体酵母を使うようにしていて、それがビールのまろやかな味わいや香りの実現に繋がると考えています。
私にビールの知識をイチから叩き込んでくれた人に、「ビールを造るのは、ブルワーではなく酵母だ」「酵母がビールをうまく造れる環境を整えるのが、ブルワーの仕事だ」ということを何度も教わったことも、酵母にこだわる理由の一つです。
また、製造工程の工夫によってビールの味わいや香りの変化を探り、幅広いスタイルのビールに挑戦しています。例えば、麦汁の糖化温度や糖化時間を変えてみたり、ホップを投入するタイミングを変えてみたり。原料を頻繁に変えることはありませんが、新しい品種のホップは試すようにしています。
色々な造り方を試した結果、ビールが思いどおりの仕上がりになると嬉しいですし、思いどおりにならなくても新たな学びがあって楽しいですね。去年からヘイジーを造る機会が増えて、ヘイジーならではのホップの香りに包まれながら缶充填する時間もすごく幸せを感じます。
——ビールの理想像はありますか?
酒尾さん:どのようなスタイルであっても、ずっと飲み続けられるビールを造りたいと思っています。甘みのあるビールを造る場合も、飲みやすさを重視するためにラクトース(乳糖)を入れることは基本的にありません。飲みごたえやホップの香りをはじめ、ビール全体のバランス感も考えています。
ワシントン州にある「Grains of Wrath(グレインズ オブ ラース)」は、ブルワリーとして尊敬しますし、目指したい姿でもあります。「World Beer Cup」や「Great American Beer Festival」で金賞を獲得する実力に加えて、現地を訪れた際に飲んだWest Coast IPAがすごく美味しくて。
彼らはアメリカ人ですが、ヘレスやラガーなどのクラシカルなビアスタイルも造っていて、“ヨーロッパに勝ちたい”という気持ちが伝わってくるんですよね。
——ビールのラベルデザインは奥様が考えられているとうかがいました。

酒尾さん:はい。妻は美大出身で絵を描くことが好きなので、仕込みのタイミングで私が考えたビールの名前・ビアスタイル・イメージする味わいを伝えて、自由に描いてもらっています。
“動物”というテーマは2人のなかで固定していて、ビールの名前に動物を入れることも多いです。最近は、恐竜などの“絶滅した古代生物シリーズ”も出しています。
——今おすすめしたいビールを教えてください。
酒尾さん:1杯目は定番の「ドリス ノ ジャガー ヲ」を飲んでいただきたいですね。「BREW CLASSIC」を象徴する「ハリコマチフリーダム」もおすすめです。妻が昔ハリネズミを飼っていて、その子の名前が「コマチ」だったことから、このビール名になりました。
また、苦労して造った思い入れがあるスタイルといえばヘイジーです。醸造1年目には、缶に充填したヘイジーが酸化反応で全て黒くなってしまった苦い経験もあります…。
「BREW CLASSIC」は液体酵母にこだわっていますが、ヘイジーだけは変色を防ぐために乾燥酵母で造っていた時期もありました。しかし、このままでは私たちが大切にしている部分を体現できないと思い改良を重ねた結果、去年から液体酵母でも変色しないヘイジーを提供できるようになったのでぜひ飲んでいただきたいです。
結果的に味わいも向上したと思うので、ブルワリーとして前進できたと感じます。
金沢に来たら訪れたい!「BREW CLASSIC(ブルークラシック)」のタップルームの魅力

2024年9月にオープンした「BREW CLASSIC」直営タップルームでは、こだわりの詰まった店内で常時6種類の樽生クラフトビールを楽しむことができます。
タップルームができるまでは醸造所の一角で週末だけビールを直売していたそうです。
——直営のタップルームは、どのようなイメージでつくられたのですか?

酒尾さん:長く愛され続けるお店にしたいという想いがベースにあったので、妻と一緒に内装も外装もDIYでつくりました。できることが限られるなかでも、自分たちの感性を全てこのタップルームで表現したかったんです。壁の漆喰を塗ったり、外壁にタイルを張ったり、ガラスや冷蔵庫のロゴは妻がハンドペイントで描いています。

カウンターやテーブル、椅子は一点もののヴィンテージ家具で統一しています。気に入ったインテリアショップが京都だったので、現地まで買いに行きました。醸造所にある冷蔵庫をタップルームに運び入れる際は、ありがたいことに常連さんが軽トラを出して手伝ってくれましたね。

タップルームづくりでは、お客さんがゆったりとビールを味わえるような空間を目指しました。たまに席数が少ないと言われますが、これで良いと思っています。
——今後の展望や挑戦したいスタイルなどはありますか?
酒尾さん:一つのタップルームを大切にしつつ、県外のビールイベントには積極的に参加したいと思っています。造り手の顔が見えるところはクラフトビールの魅力の一つだと思うので、「BREW CLASSIC」のビールを飲んでいただいている方々や、仕入れていただいている取引先と直接お話する機会を増やしたいですね。
挑戦したいビールは、バレルエイジドビールやハイアルコールビールです。金沢のワイナリーが使用していたワイン用の樽でビールを熟成させるなど、地元の繋がりも大切にした取り組みができたら良いなと思っています。金沢のブルワリー同士や日本酒の蔵元とのコラボも少しずつ実現していけると嬉しいです。
直売所の頃から来てくれている常連さんはもちろん、「BREW CLASSIC」を応援してくださる人がたくさんいるので、中途半端なことはできないなと気が引き締まります。
——今回はお話を聞かせていただき、ありがとうございました!最後にまだ「BREW CLASSIC」のビールを飲んだことのない方々へメッセージをお願いします。

酒尾さん:定番ビール「ドリス ノ ジャガー ヲ」のビアスタイルである「American-Belgo」は、造っているブルワリーが非常に少なく、とっつきにくさを感じてしまうかもしれません。しかし、まずは構えず飲んでみてほしいなと思います。「BREW CLASSIC」のビールはオンラインでも購入できますので、遠方にお住まいの方はぜひ一度ホームページを見ていただけると嬉しいです。
また、「BREW CLASSIC」のタップルームは、兼六園や21世紀美術館などの観光地からとても近い場所にあります。お子さま連れも大歓迎ですので、金沢を訪れた際にはぜひお立ち寄りください!
編集部が飲み比べ!「BREW CLASSIC(ブルークラシック)」のおすすめクラフトビールを3つご紹介
ドリス ノ ジャガー ヲ

「BREW CLASSIC」の唯一の定番「ドリス ノ ジャガー ヲ」は、ビール競技のオリンピックとも呼ばれる「WORLD BEER CUP 2023」「World Beer Awards 2025」で金賞に輝いたビール。
ホップの特徴とベルジャン酵母の特徴のバランスをとりながら双方を活かして完成するビアスタイルです。
コリアンダーの爽やかなアロマがふんわりと香り、苦みもしっかりと楽しめます。ライトな口当たりでキレが良い、ドリンカブルな一杯。
温度が上がるにつれて、バナナのようなジューシーな香りと甘みも感じられます。
スタイル:American-Belgo
アルコール度数:6.0%
ホップ:Motueka, NelsonSauvin, Columbus
サイオウ ガ マスタング

2026年(午年)の最初にリリースされた「サイオウ ガ マスタング」。
ニュージーランド産のホップとの相乗効果を狙い、「WLP077 Tropicale Yeast Blend」という酵母を選択したそうです。
グレープフルーツのような爽やかさと苦みを、ピーチのような優しいアロマが包み込む一杯。
口に入れた瞬間から最後まで心地よい苦みが残り、重なり合う多様な香りと味わいをじっくりと楽しめます。
スタイル:New Zealand IPA
アルコール度数:6.5%
ホップ:Rakau Amplifire, Superdelic & Nelson
ラウイスクス

「WLP066 London Fog」という酵母を使用した「ラウイスクス」。改良に苦労したというヘイジースタイルです。
南国を思わせるトロピカルなアロマを、最後に苦みが引き締めてくれます。
まろやなか口当たりで、豊かな甘みも感じられます。飲みごたえがありつつ、後味はスッキリとした一杯です。
スタイル:Hazy IPA
アルコール度数:6.5%
ホップ:Nelson Amplifire, Mosaic, Strata
品質追求へのチャレンジは続く!「BREW CLASSIC(ブルークラシック)」の今後に注目

地元・金沢で愛され続けるブルワリーを目指す酒尾さん。「お客さんから “北陸を代表するブルワリーになってほしいし、ビールの品質や人柄的にも、なれると信じています!” と熱く言われたときは嬉しかった」と、素敵な笑顔を見せてくれました。
「BREW CLASSIC」が国内外の大会で賞を獲得してきた背景には、酒尾さんのビールづくりを心から楽しむ姿勢とチャレンジ精神、そして酵母へのこだわりがあるのだと確信しました。
ぜひ一度、ご夫婦のこだわりとセンスが光るタップルームで、「BREW CLASSIC」のクラフトビールを堪能してみてください!
編集部は今後も、気になるブルワリーを追いかけていきます。お楽しみに!
店舗概要
店舗名:BREW CLASSIC
タップルーム住所:石川県金沢市片町1−3−3
営業時間:13:00~21:00
定休日:月・火
支払い:現金・キャッシュレス決済可(クレジットカード・交通系電子マネー・QRコード)
公式Instagram:https://www.instagram.com/brewclassicbeer/








