新宿伊勢丹「イセタン クラフトビアバー」担当者に聞く!顧客の6割が女性、百貨店ビアバーの意外な素顔

イセタンクラフトビアバー
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  • イセタンクラフトビアバーを担当する、バイヤーの長谷川豊康さん(写真向かって右)と、井上敬之さん(写真向かって左)
  • イセタンクラフトビアバーを担当する、バイヤーの長谷川豊康さん
  • 缶ビールのディスプレイ
  • 約220種類の缶ビールが常時展開されています
  • グラスは缶ビールよりも少ない265mlのワンサイズ
  • 新宿伊勢丹「イセタン クラフトビアバー」担当者に聞く!顧客の6割が女性、百貨店ビアバーの意外な素顔

伊勢丹新宿店本館の地下1階。和酒やフードコレクションが並ぶ一角に、週替わりで全国のブルワリーが登場するクラフトビール専門のバーがあります。

その名も「イセタンクラフトビアバー」。

2023年のオープンから4年目を迎えたいま、この店は単なる百貨店の飲食コーナーにとどまらない、独特のポジションを築いています。

スタンディングで1人30分・3杯まで、1杯から気軽に楽しめるこちらのお店。仕事帰りに毎日立ち寄る常連もいれば、クラフトビールを初めて口にする人もいるのだそう。そして興味深いことに、利用者の6割は女性なのだとか。

今回は、百貨店という場所だからこそ見えてくるクラフトビール市場の姿を、担当バイヤーの長谷川豊康さんにうかがいました。

30分3杯までの独自ルール。1杯から気軽に楽しめるイセタンクラフトビアバーとは?

イセタンクラフトビアバーを担当する、バイヤーの長谷川豊康さん(写真向かって右)と、井上敬之さん(写真向かって左)

イセタンクラフトビアバーの基本ルールは、スタンディングで1人30分・3杯まで。1週間ごとに異なるブルワリーがゲストとして登場し、4~5種類の樽生ビールを日替わりならぬ週替わりで提供します。

飲み比べながら、タイミングが合えば作り手であるブルワー本人に醸造のこだわりを直接聞けることもあります。

グラスは缶ビールよりも少ない265mlのワンサイズ

この30分・3杯というルールが、独特の居心地を生んでいます。買い物のついでに1杯だけサクッと飲んで5分で帰る人もいれば、30分じっくりビールの話に浸る人も。

飲みすぎることなくほろ酔いで気持ちよく帰れるので、毎日仕事帰りに立ち寄ることをルーティンにしている人も少なくないそうです。

長谷川さん:30分1ターンで、1杯から飲めるという気軽さから、滞在時間5分ほどのお客様もいらっしゃいます。お買い物のついでにビールをサクッと飲んで帰ることも、ビールについて深く知りたいときは30分じっくり話を聞くこともできる。

この自由さが、居心地の良さに繋がっているのだと思います。

同じビールでも「ここで飲むと美味しい」その理由

リピーターが口をそろえて挙げるのが「居心地の良さ」ですが、その正体は自由なルールだけではありません。もうひとつの柱が、徹底した品質管理です。

オープン時に監修を依頼したのは、中野のビール注ぎ分け専門店「麦酒大学」オーナーの山本よしみつ氏。長谷川さんはオープン前、何度も麦酒大学に通って品質管理のノウハウを学んだそうです。

長谷川さん:毎日ビールサーバーの細部まで徹底的に清掃し、ビールの品質を保っています。山本さんをはじめとする“注ぎ名人”の方々にも認めてもらえる環境を整えてきました。

彼らから「ビールを造った時点を100点だとしたら、その100点をどれだけ減点せずに注ぎ切るかというところが、注ぎ手の仕事でありプロの技だ」と教わり、我々もブルワリーの方々に造っていただいたビールを理想の状態で提供することにこだわっています。

また、ガス圧をタップごとに調整できる独立弁が付いていたり、普通のタップとボールタップを要望に応じて使い分けできたりと、注ぎ名人の監修ならではのこだわりが光ります。

今までに飲んだことがあるクラフトビールでも、イセタンクラフトビアバーで飲むと、ひと味違って感じるかもしれません。

編集部が体験した至高の30分!イセタンクラフトビアバーの真髄を味わう

フィンバックIPA(写真向かって左)と、ノドゴシ(写真向かって右)

取材時は「New York 人気ブルワリー特集」が開催されていたので、編集部でも実際に利用してみました。

ラインナップは、ニューヨーク都市部のクラフトビール黄金期を築いた「Finback Brewery」と、2025年開業の日本人による同地初のブルワリー「Saltfields Brewing」の2社です。2名で訪れた今回の取材。1人2杯ずつ、New Yorkの今を感じるクラフトビールを堪能してきました。

編集部が飲んだクラフトビール一覧

フィンバックIPA(Finback Brewery/ウエストコーストIPA/6.8%/1,320円)── Finback Breweryの定番ビール。グレープフルーツを想わせる爽快な風味、メロンを想わせるジューシーなキャラクターに、青々しいダンクなアーシーさが感じられます。

ノドゴシ(Saltfields Brewing/ライスラガー/4.7%/1,210円)── 麹とカルロース米を使用して造られたドライで爽快なライスラガー。クリアな味わいの中にほのかな甘味に華やかさ、そして麹による少々の酸味が感じられます。

フリー フローティング(Finback Brewery/ヘイジーダブルIPA/8.4%/1,430円)── Citra、Mosaic、Motueka、Superdelicと人気ホップをぜいたくに使用。

ローリング イン クラウズ(Finback Brewery/ヘイジーIPA/7.1%/1,320円)── トロピカルフルーツのようなフレーバーに、シトラシーな風味とスパイシーさ。

砂時計が落ちる前に飲み干しました

砂時計の砂が落ちきるまでの30分は、ビール片手に会話を楽しんでいるとあっという間です。名残惜しさはありますが、ほろ酔いで気持ちよく帰れる。毎日通う人の気持ちが、よくわかりました。

5分で帰る人から30分粘る人まで受け止めるこの店には、どんな人が集まっているのでしょうか。長谷川さんのお話からは、百貨店ならではの意外な景色が見えてきました。

百貨店だから見える景色。ギフト需要で賑わうイセタンクラフトビアバー

イセタンクラフトビアバー

イセタンクラフトビアバーの最大の特徴は、クラフトビール専門店とは客層も購買行動もはっきり違うことです。伊勢丹のエムアイカード会員を対象にした2025年度の分析では、利用者の6割が女性。そしてその多くが「ギフト需要」だといいます。

長谷川さん:クラフトビールの専門店だと、新作やマニアックなビールを追い求めるお客様が多いため、1回あたりの購入本数は1~2本が相場だと思います。

我々も2本ほどを想定していたのですが、蓋を開けてみれば平均4本ほど。カゴにビールをどんどん入れていく方もいらっしゃって、はじめは驚きました。

背景にあるのが「自分は飲まないけれど、ビール好きの人に贈りたい」という需要です。だからこそ専門店では新作やレア物が動くのに対し、ここでは定番や人気銘柄がよく売れます。

ビールコーナーで迷う若い女性に声をかけると、「パートナーがクラフトビール好きで」「差し入れに持っていきたくて」と相談されることもよくあるのだとか。

クラフトビールに詳しくない人でも入りやすく、スタッフに相談しながら選べる場所は限られています。その需要を満たしつつ、マニアも満足させる。ここに、この店の唯一無二の強みがあります。

一番売れるのはIPA。でも、いま静かに変わりつつある

缶ビールのディスプレイ

オープン当初から一貫して最も売れているビアスタイルはIPAです。大手のラガーとの違いがわかりやすく、「まず飲んでみたい」と手に取る人が多いことが人気を支えています。

ただ、ここ1~2年で変化の兆しも。ピルスナーをはじめとするラガー系や、低アルコールビールの売上が少しずつ伸びてきているそうです。

長谷川さん:日常でも気軽に飲めるビールを求める人が増えてきた印象があります。私自身、はじめはIPAやハイアルコールの“ご褒美ビール”を好んでいましたが、日常的に飲むには厳しいと感じるように。

そこから、同じラガーでも作り手によって味わいが違うことや、サワーエールの面白さに気付いて、選ぶスタイルが変わってきました。

イセタンクラフトビアバーをきっかけにクラフトビールを飲み始めた人が、長谷川さん自身がたどったように“次のフェーズ”へと移っていく。売れ筋の変化は、この店が育てた飲み手の成長曲線そのものなのかもしれません。

来るたびに発見がある。約220種の缶が並ぶビールコーナー

約220種類の缶ビールが常時展開されています

バーカウンターに隣接するビールコーナーには、百貨店として最大規模の約220種類の缶ビールが常時並びます。ギフトとして購入するだけでなく、バーで気に入った一杯をそのまま買って帰れるのも魅力です。

定番に加え、3,000~4,000円台の高級ボトルや、スイス「ボンシェン」のような酸味の強いマニアックな銘柄まで幅広く揃います。

長谷川さん:来店するたびに発見や楽しみがあるラインナップを目指し、幅広いビアスタイルを揃えることを意識しています。ブルワリーの新たな取り組みを反映したビールや、チャレンジングな副原料を使った“面白枠”のビールも、月に何回か仕入れています。

常設の判断基準は、人気や供給量に加え「お互いに販促できる良い関係を築けるか」。オープン前に関西を中心に多くのブルワリーを巡った縁も、いまに続いています。

神戸の「open air」は当時からの付き合いで、「東京でopen airを買うなら、常にたくさん置いてある伊勢丹へ」とお客様に薦めてくれるのだそうです。

客層も、売れ筋も、品揃えの思想も、すべては「作り手とお客様をどう繋ぐか」という一点に向かっています。そしてそれは、この店がこれから挑もうとしていることにも、まっすぐ繋がっていました。

イセタンクラフトビアバーが目指す「作り手とお客様を繋ぐ場所」

Y.MARKET BREWING
West Coast Brewing
Teenage Brewing

過去には、「京都醸造」「Y.MARKET BREWING」「West Coast Brewing(ウエストコースト ブルーイング)」「Teenage Brewing(ティーンネイジ ブルーイング)」「GRANDLINE BREWING(グランドライン ブルーイング)」などがゲストとして登場したというイセタンクラフトビアバー。

週替わりのゲストブルワリーを選ぶとき、長谷川さんが最も重視するのは「どんな想いでビールを造っているか」。その想いが宿った名物ビールがあるブルワリーや、「もっと多くの人に知ってほしい」という熱量の強いブルワリーには、積極的に声をかけているそうです。

長谷川さん:ブルワリーの方や常連さんから『最近ここが美味しかった』と店頭で聞くこともありますし、ビアフェスの手伝いに行ったお客様から運営目線でおすすめしてもらうことも。

気になるブルワリーは複数人で実際に訪れ、醸造への想いを直接うかがったうえで話を進めることが多いですね。

オープン当初は伊勢丹から声をかけていたものの、2年目からはブルワリー側から出演の依頼が来ることも増えたのだとか。ゲストとして立ったブルワリーが別のブルワリーを紹介することも多いそうです。3年以上の積み重ねが、口コミとなって作り手のあいだに広がっています。

百貨店のレストランへ。クラフトビールの裾野を広げる

この「繋ぐ」という発想は、店の外へも広がっています。イセタンクラフトビアバーは、ブルワリーと共に造ったオリジナルのコラボビールを、伊勢丹新宿店内のレストランやカフェで提供する取り組みを続けてきました。狙いは、普段クラフトビールに触れない客層との接点づくりです。

長谷川さん:百貨店のレストランをよく利用されるお客様とクラフトビールの接点を作り、裾野を広げられたらと。

ご年配の方も多いので親和性を少し不安に思っていましたが、初回の京都醸造とのコラボは2週間で500名ほどに飲んでいただけて、手応えを感じました。

料理と多様にペアリングできるクラフトビールだからこそ、百貨店の飲食店とも調和しやすいといえます。顧客参加型のオリジナル企画も人気が高く、過去には静岡「West Coast Brewing」を訪ねる遠征イベントに、十数名の枠へ約200名の応募が殺到したこともあったそうです。

10月には滋賀「FLORA FERMENTATION」とのコラボが登場

FLORA FERMENTATION の醸造所
FLORA FERMENTATIONの代表・大西氏

オープンから3年でコラボビールは8回をリリース。直近の相手は、滋賀県のブルワリー「FLORA FERMENTATION」です。10月7日(水)~イセタンクラフトビアバーにてプロモーション出店し、伊勢丹限定オリジナルビールが展開される予定。選んだ決め手は、彼らのサステナビリティへの姿勢でした。

長谷川さん:彼らは「農業×発酵」を掲げ、ビールを造るだけでなく、自分たちで小麦やホップを栽培したり、地域で手放された農地を受け継ぎ、再び活用したりしています。

また、醸造の過程で生まれるモルトの搾りかすも、単なる産業廃棄物として処分するのではなく、肥料や飼料として地域の中で循環させています。原料を育て、ビールを造り、その過程で生まれたものを再び地域へ還元していく。そうした一連の循環まで含めてものづくりを考えているところが、FLORA FERMENTATIONの大きな魅力だと感じています。こうした取り組みや背景を、三越伊勢丹グループのサステナビリティ活動『think good』と絡めて多くの人に伝えていきます。

志高くビールを造る人を、当事者ではなく消費者に近い百貨店だからこそ応援し、発信していきたい。百貨店のお客様はビールの生産背景まで深く知りたい人が多く、地域と結びついたクラフトビールとの相性は良い、と長谷川さんは考えています。

「みんなで作る」個人商店のような店が理想。イセタンクラフトビアバーの今後から目が離せない

「接客面でもお客様に寄り添いたい」と語る長谷川さん

接客の面でも、この店は独自の道を行きます。スタッフはビール好きで知識も豊富。目指すのは、お客様の好みに寄り添いながら新たな“好き”も引き出す、百貨店らしい「コンサル型の接客」です。

「自分では選ばないけれど、薦められて飲んだら気に入った」──そんな体験が、リピートの理由になります。

長谷川さん:クラフトビールを飲み慣れていない方には、ビアバーより百貨店の一角のほうが来店のハードルが低い。常連さんがご友人を連れてきてくださることも少なくないので、その面白さを知っていただくためにもスタッフの提案力は必要だと考えています。

必要とされたら積極的に提案し、引くときは引く。この距離感が、初心者にもマニアにも通いたくなる安心感を生んでいます。実際、2週間に1回以上通うお客様が約50名、月1回が約150名、なかには年間50日以上訪れる人もいるのだとか。

長谷川さんの理想は「みんなで作る」こと。お客様の声を品揃えやプロモーションに積極的に取り入れる、個人商店のような百貨店を目指していると話します。

長谷川さん:百貨店に自分の意見が反映されるという特別な体験は、きっと喜んでいただけますし、そこからファンになっていただけたら嬉しい。“推し”への熱意が伊勢丹のプロモーションに繋がることもあります。要望や情報提供はいつでも大歓迎です。

お酒はそれほど強くないけれど色々試したい人、ビール醸造の背景まで知りたい人、クラフトビール好きの仲間を増やしたい人。イセタンクラフトビアバーは、そのどれにも応えてくれる場所です。

幅広いスタイルが揃い、あまりビールを飲まない人も多く訪れるので、「試しに飲んでみたい」「仲の良い友人にクラフトビールを好きになってほしい」という入り口としても最適です。

1週間ごとに主役が替わり、季節ごとに企画が動く。だからこそ、何度訪れても新しい発見があります。最新情報は伊勢丹新宿店の公式Instagramでチェックしてみてください。

次はどんなブルワリーが、どんな一杯を注いでくれるのか。今後のゲストやコラボビールにも注目です!

店舗概要

・店舗名:イセタンクラフトビアバー
・住所:東京都新宿区新宿3-14-1 伊勢丹新宿店 本館地下1階
・アクセス:新宿三丁目駅から徒歩1分
・営業時間:15:00~20:00(L.O.19:30)
・定休日:不定休
・支払い:現金・クレジットカード・バーコード決済
・公式Instagram:https://www.instagram.com/isetan.shinjuku_sake_beer/
・公式X:@isetan_beer

《BEERMAPS編集部》