2025年9月13日(土)から15日(月・祝)の3日間、横浜港「大さん橋ホール」で開催された BeerFes Yokohama 2025。200種類を超えるクラフトビールが試飲し放題というフォーマットで、ビール愛好家から初挑戦者までを引き込むフェスティバルでした。
来場者数は約4,000人。大さん橋というロケーションも相まって、海風と港の景色がゆるやかな非日常を演出していました。入場チケットに含まれるのはベストアロマグラスと、何度でも試飲できる権利。各日2部の入替制で、各回定員800名という指定回制の設定は、混雑と回転のバランスを意識してのことと思われます。

ビール通としてまず注目したいのは、その“スタイルの幅”です。IPA、ヴァイツェン、ブラウンエール、ラガー、コーヒービール、フレッシュホップもの、サワー類など、クラフトの主要スタイルがしっかり押さえられていました。特に際立っていたのは、Hazy IPA やベルジャン風ペールエール、南国フルーツを用いたライトなフルーツビールなど、夜に重くならないラインアップが多かったこと。
出展者リストにも目を通すと、地元神奈川の醸造所を筆頭に北海道から沖縄の地方醸造所まで、ブルワリーの地理的分布が広いことがわかります。地元感だけでなく地方発の個性派ブルワリーを見ることができたのは、このフェスの強みでした。また、「試飲グラスが 50 ml のラインで統一されている(実際は結構多めに注いでくれる)」「高アルコールビールはさらに小さめ提供あり」という表記があったことも好印象。味の幅をたくさん楽しませる工夫がされていました。
200種超の海でたどった“航路”

BeerFes 横浜 2025 は200種類以上のクラフトビールが集う巨大なテイスティング会場。全部を飲むのは到底不可能。だからこそ、自分なりの航路を描きながらグラスを重ねるのが、このフェスの醍醐味です。今回は、私が実際に味わった14杯を振り返りながら、このフェスの奥行きをレポートします。
クラシックから冒険へ ―― ピルスナーとIPA

最初の一杯は茨城の TWIN PEAKS MOUNTAIN BREWING「Dr.Pilsner」(ABV5.3%)。清涼感のある苦味とクリーンな仕上がりで、ウォーミングアップには理想的。喉を潤したあとに、次第にIPAの荒波へと足を進めました。

山梨のNORI’S BEER「Hazy Yuzu IPA」(5.0%) は柚子の爽やかさがアクセント。続けてNORI’S BEER「American Pale Ale」(5.0%)も同じく爽やか。シトラスを感じる香りのなかにしっかりと苦みが追い付いてくる印象。続く 妙高高原 ALPEN BLICK BEER「Haneuma IPA」(ABV6.0%) は、ホップが全力で暴れ回る骨太なIPA。さらに愛媛の GOGOSHIMA BEER「Iyokan IPA」(ABV6.0%) は、伊予柑の柑橘感がIPAに寄り添うユニークな仕上がりでした。

極めつけは AMAMI BREWERY「Habu IPA」(ABV10.0%)。ダブルIPAの爆発的な苦味とアルコール感。南国・奄美から届いた、ネーミングの「ハブ」に恥じない、強烈な一撃でした。

ヘイジー、フルーツ、軽快な寄り道

IPAの奥深さを堪能したあとは、ヘイジー系で柔らかさを取り戻します。茨城のMito Brewing 大工町醸造所「とろりん」(ABV6.6%) の濃厚でジューシーな味わい。新潟のOTAMA BREWING「Harumachi Hazy IPA」(ABV6.0%) は春を感じさせるような瑞々しい仕上がりで、同じHazyでもキャラクターの違いが楽しい。

フルーツを使ったアプローチも印象的でした。YOKOSUKA BEER「パイン。」(ABV6.5%) はパイナップルのトロピカルさをヘイジーに重ね、思わず南国気分に。長野みなみ風「信州トマト」(ABV5.0%) や 沼津駅前醸造所「沼津甘夏エール」(ABV6.0%) は、地元の食材を全面に押し出し、土地の個性を液体に溶かし込んでいました。
軽やかな息抜きと伝統の再発見

濃いスタイルが続いた後、気分をリセットしてくれたのが山梨の八ヶ岳ブルワリー TOUCHDOWN「Peach Weizen」(ABV5.5%)。白桃の華やかさと小麦のまろやかさが見事に調和。

同じく 長野みなみ風「Ubuka-初夏-」(ABV4.5%) はセッションIPAらしく軽快で、次の一杯への橋渡しにちょうどよかったです。

そして最後に立ち寄った本日 NORI’S BEERで3液種目の NORI’S BEER「BB Berkley」(ABV5.0%)。スタイルがわからなかったのですが、ホップの苦みとブルーベリーの程よい酸味とのバランス感が絶妙で、このブルワリーの底力を感じました。
フェスで見えてきたこと
この14杯を通して感じたのは、クラシックとローカル食材、そしてホップの奔放な表現が同じテーブルに並ぶ楽しさ。IPA一辺倒ではなく、ピルスナーやヴァイツェンが組み込まれていたことで、飲み歩きのリズムが自然に生まれました。
また、同じ“フルーツアプローチ”でも、伊予柑、パイナップル、トマト、甘夏と多様で、それぞれが地域性やブルワリーの哲学を映し出していることに気づかされます。
まとめ ―― グラスの数だけ物語がある
BeerFes 横浜 2025 は、200種の中から自分だけの物語を紡ぎ出す場でした。飲み切れないほどの選択肢は、むしろ「次はどれを選ぶ?」という期待感を生みます。私がたどった14杯はほんの一例にすぎません。隣のテーブルの人が掲げていたグラスの中にも、きっと別の物語があったはず。クラフトビールのフェスは、単なる試飲会ではなく、“選び、語り、共有する場”。横浜の海を望みながら交わした乾杯は、そんな気づきを教えてくれるものでした。
【開催概要】
ビアフェス横浜2025
会期:2025年9月13日(土)~9月15日(月・祝)
時間:9月13日(土)12:00~15:00(ラストコール14:50)/16:00~19:00(ラストコール18:50)
9月14日(日)11:30~14:30(ラストコール14:20)/15:30~18:30(ラストコール18:20)
9月15日(月・祝)10:30~13:30(ラストコール13:20)/14:30~17:30(ラストコール17:20)
場所:横浜港大さん橋国際客船ターミナル 大さん橋ホール
料金:前売り券 5,800円(各開催日の前日まで発売)
※Yahoo!パスマーケット、チケットぴあ、イープラス、セブンチケットにて販売
※予約や受取方法によって別途手数料等がかかる場合があり
当日券 6,300円
※上記料金はすべて消費税込み