東京の最西端・奥多摩で開催された「OKUTAMA BEER FEST 2025」。主催は地元ブルワリー VERTERE(バテレ)。
新宿から電車でおよそ1時間40分ほど、秩父多摩甲斐国立公園に包まれた自然豊かな地で開かれたフェスには、クラフトビールファンが集まりました。山の空気に溶け込むような穏やかさと、確かな熱を感じたビアフェスを振り返ります。
奥多摩駅を下車、フェスの入り口へ

青梅駅で乗り換え、JR青梅線で奥多摩駅へ。列車が山あいに入ると、車窓の外に渓流や紅葉が現れ、都心から少しずつ時間の流れが変わっていくのを感じます。終着・奥多摩駅に到着すると、会場のVERTERE 醸造所までは徒歩では少し距離があるため、この日は臨時バスが運行。車内にはアウトドアルックに身を包んだビアギークや家族連れなど、さまざまな人たちの笑顔があり、ゆったりとしながらもどことなく高揚感に包まれていました。
醸造所を包む秋の匂いと笑顔

会場に着くと、キッチンカーから地元グルメの美味しそうな匂いが漂い、奥多摩の澄んだ空気と混じり合って食欲を誘います。広々とした醸造所の敷地内にはイスとテーブルが並び、ビール片手に談笑する人々の姿。解放された醸造所内ではタンクを眺めながら、思い思いにグラスを傾ける──そんな穏やかな時間が流れていました。

この日、各ブルワリーは4種類前後のタップを用意。その中から、目に留まった7種類を選び、じっくりと味わいました。
奥多摩で出会った、7つの個性
VERTERE(東京・奥多摩)

Eugenia|NZ IPA|ABV 7.0%
ニュージーランド産ホップ由来のトロピカルかつフローラルな香りが広がるIPA。ホストブルワリーらしい繊細なタッチと奥多摩の清涼感が共鳴する。
West Coast Brewing(静岡)

Pineapple Party|Session Hazy IPA|ABV 5.0%
南国のフルーツを思わせる香りが弾け、軽やかな飲み口。ジューシーさの奥に芯のある苦味があり、ドリンカブルながら満足感の高い仕上がり。
奈良醸造(奈良)

FACE|Micro IPA|ABV 3.0%
低アルコールながらホップのキャラクターをしっかりと引き出した一杯。軽やかで繊細、それでいて物足りなさを感じさせない完成度。
INKHORN BREWING(東京・目白)

ROBIN #2|Hazy Pale Ale|ABV 5.0%
Citraホップを中心に構成された、優しい濁りと明るいアロマが特徴。ライトボディながらホップの層が深く、軽快さの中に確かな飲みごたえを感じる。
SAKAMICHI BREWING(東京・立川)

Sky Saw|West Coast IPA|ABV 6.5%
センテニアル、コロンバス、シムコーの3種ホップをブレンド。松脂や柑橘、スパイスの香りが重なり合う、クラシックな西海岸スタイルの王道。
TOTOPIA BREWERY(愛知)

Stickyphobia|Oat Cream Hazy IPA|ABV 6.5%
滑らかなオーツの口当たりと、ミルキーなボディが特徴。トロピカルフルーツの香りが濃密で、フィニッシュにはやわらかな甘みが残る。
West Coast Brewing × TOTOPIA BREWERY

Aquaphobia|Sour DIPA|ABV 8.0%
両者の個性が交わる異色のコラボ。酸味と苦味がバランスよく共存し、トロピカルかつシャープなフィニッシュが印象的。
新工場と、広がる奥多摩のクラフトシーン

今回のフェスは、新たな拠点を得て動き出したVERTEREにとって、「これからの奥多摩」を映す場でもありました。2024年2月に醸造を開始した新工場は、奥多摩町が所有する未利用地に建設されたもので、これまでの約4倍の生産体制を確保。国内の需要に応えながら、海外出荷やふるさと納税向けの供給にも対応できるようになりました。

単なる増産ではなく、地域と共に成長していく拠点としての意味を持ち、奥多摩町やJR東日本との協働によって、観光やイベントを通じた地域活性にも取り組む方針です。クラフトビールが地域の未来を形づくる──奥多摩に吹く新しい風は、まさにその象徴といえるでしょう。
駅前の余韻と、もう一杯

フェスを後にして駅前へ戻ると、VERTEREのボトルショップが目に入ります。さらにショップ脇の小道を行くとVERTEREのタップルーム「Beer Cafe VERTERE」があります。「青山居麦酒醸造所」という看板を掲げた趣のある門をくぐると木々の中にウッドデッキが広がり、古民家をリノベーションした店舗が佇みます。

タップルームでは、Anthocharis(Sour IPA/ABV 6.0%) を注文。柔らかな酸味と華やかなアロマが、フェスの余韻を優しく締めくくってくれます。

ウッドデッキの席からは赤く色づいたモミジが秋の訪れを感じさせます。見上げると澄んだ青空が覗き、木々の隙間からは柔らかい秋の日差しが差し込む。自然と人とクラフトビールが、穏やかに溶け合う──そんな時間が、ここには流れていました。
都心から少し足を延ばして出会う、“時間の余白”

奥多摩は、新宿から電車で約1時間40分。けれど、その距離の中に流れる時間の質はまるで別世界のようです。山の緑と川の音、グラス照らす自然の光。そのすべてが一杯のビールを特別なものにしてくれます。

「OKUTAMA BEER FEST 2025」は、そんな“土地とクラフトビールの共鳴”を静かに伝えてくれるイベントでした。次の季節、またこの場所で乾杯できる日を楽しみにしています。
【イベント詳細】
■OKUTAMA BEER FEST 2025 | 奥多摩ビールフェス2025
■日時:2025年11月1日・2日 両日ともに11:00~17:00 (10:30開場/17:00ビールラストオーダー)
■会場:VERTERE 醸造所敷地内 東京都西多摩郡奥多摩町氷川1099-6
■入場:無料
■主催:VERTERE 合同会社
■後援:奥多摩町
■協力:株式会社ジェイアール東日本都市開発 一般社団法人奥多摩観光協会 奥多摩町観光案内所








