18時、Punk IPAはもう無かった。BrewDog Bar Roppongi「最後の夜」現場レポ

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2025年12月28日 日曜日、あと数ヶ月で開店12周年を迎えようとしていたBrewDog Bar Roppongiが、多くのファンに惜しまれつつ閉店しました。その最後の日をレポートします。

いつもなら日曜はお昼頃に開店なのに、16時に開いた最終日。用事を済ませて18時にBrewDog Bar Roppongiに到着すると、まだ外に数名並んだ列が。


当然満席で混み合った店内に入ると、フラッグシップのPunk IPAはすでに打ち抜かれているし、最後のコラボ「Avant-Dog 4Ever」も、同様にもう無し。閉店の日が現実だと、入店して数秒で突きつけられます。

閉店時間の22時まであと4時間で「終わり」だけど、しんみりというより、「ラストスパート!」のパッションが満ち満ちていました。

18時、もう“無い”ものが増えていた


この日飲むのは、ゲストビールではなくBrewDogだけにしようと決めていました。スタッフにタップの状況を聞くと、すでにいくつかがSOLD OUTで、タップにつながらない色々なビールが入っていてテイクアウトや店内で飲める、あの冷蔵庫にももう何もありません。冷蔵庫は「空(から)」なのに、店内は「満」席。その真逆の光景が、否が応でも最後を意識させました。

感慨深い思いの中、最初の一杯に選んだのは、次に好きな定番のHazy Janeに。そこからElvis Juice、Lost Lager、Wingmanと、残り少ないBrewDogでつないでいきます。いつもなら「次は何か珍しいものを」と選ぶ時間すら楽しいのに、この夜は「もう無いもの」が先に目に入ってしまいます。

Hazy Jane(ABV 5.0%)
ジューシーなホップ感と、やわらかい口当たりが魅力のヘイジーIPA。苦味は強すぎず、わっと広がるトロピカル寄りの香り。

Elvis Juice(ABV 6.5%)
グレープフルーツの柑橘感が前に出るIPA。ほどよい苦味と皮っぽいビターさがあり、キレよく飲める “柑橘系BrewDog” の代表格。

Lost Lager(ABV 4.5%)
軽快でクリーンな飲み口なラガー。派手さはないけれど、麦の旨みとすっと消える後味で、テンポよく飲める。

Wingman(ABV 4.3%)
飲みやすさを軸にした、セッションIPA。ホップの香りは穏やかで、苦味も控えめ。派手に主張しない分、会話や空気を邪魔せず、最後の夜の余韻にwingman(僚機・サポート役)として寄り添う、やさしい味わいの一杯。

フードも、終盤に向けて徐々に選択肢が減っていきました。ミックスナッツとフライドポテトは頼めましたが、ラストオーダー前には「もうポテトだけ!」という状態に。12月には何回か通ったのですが、最後の数日はオーダーできないメニューもあって、ビールだけでなくキッチンも、終わりへ向かっていました。

ジンギスカンプレート1

ジンギスカンプレート

シーザーサラダ・チキン・ピザ2

シーザーサラダ・チキン・ピザ

個人的にメニューで思い出深いのは、コロナ禍のときの「ジンギスカンプレート」と、やはりその頃にあった「シーザーサラダ・チキン・ピザ」ですね。独りで来たときに食事として頼んでました。どっちも数年前にとっくに終わってましたが。

メガホン、歓声、5回以上のじゃんけん大会

BrewDog Bar Roppongiでのイベントと言えば、ゼネラルマネージャー、ヒロシさんが仕切る定番の「じゃんけん大会」。もちろん、最後の夜も例外ではありません。これでもか、これでもかと繰り広げられました。メガホンの声が響くたびに、店内の熱量がもう一段上がります。

じゃんけんをする前にスタッフが一人ずつ前に出て、短いコメントを添えます。ステージと客席ではなく、同じ場を作ってきた人同士の距離感。お店というより、コミュニティの集まりに近い空気がありました。スタッフだけでなく、ブリュードッグ・カンパニー・ジャパンの岡田さんもじゃんけんを仕切る!

景品は、ファンにとって“お宝”と呼びたくなるものばかりでした。貯蔵冷蔵庫に眠っていたレアなボトル、店内のアートワークやポスター、スタッフの写真群、タップのハンドル、コラボ・ビールの特別なラベルの缶。閉店の日にしか放出されないものが次々に出てきて、そのたびに歓声が上がります。

個人的に象徴的だったのは、「TOKYO ☆ Strong Stout」(インペリアル・スタウト ABV18.2%!)をじゃんけんで勝ち取った瞬間でした。ただし賞味期限切れ。普通ならネガティブに聞こえる言葉なのに、この夜は違います。冷蔵庫奥に眠っていた “この店の時間” を手に取った感じがして、歓声と一緒に、場の空気が一段とTOKYO ☆ Strong Stoutのように濃くなったのを覚えています。

22時、Punk IPAラッピングの“BREWDOGカー”が現れた


一応のオフィシャル閉店時間の22時になりました。熱気が収まるどころか、店の前にPunk IPAブルーのラッピングが施されたホンダ・シビックが現れました。“BREWDOGカー” です。ヒロシさんの案内で、お客さんもスタッフも外へ出て、自然発生的に記念撮影が始まりました。

店前が撮影スポットになり、笑い声が増え、スマホが並びます。そこにあったのは喪失感というより、「この場所が好きだった」という事実が集まってできた熱狂でした。

22:30の挨拶、そして “蛍の光” レゲエ版


22:30ごろ、ヒロシさんの挨拶がありました。11年と10ヶ月間続いたお祭りが終わる夜に、その場に立ち会った全員が同じ方向を向く時間でした。

ブリュードッグ・カンパニー・ジャパン(BCJ)の代表 本庄さんからの挨拶もあり、六本木店という “場所” は消えても、BrewDogを好きでいる気持ちは消えない。最後の夜は、その共通点を確かめ合う時間でもありました。

閉店は22時のはずなのに、その後も多くの人が残り続けます。気づけばもうほぼ24時。店のテンションが落ちないまま、時間だけが先へ進んでいく感覚が。そして、エンディングとして流れたのが、BrewDogの母国スコットランドの民謡『蛍の光』のレゲエ・バージョン。閉店時の退店を促す定番曲でも「しんみりさせるのはこの店らしくない!」というメッセージが伝わります。

最後にヒロシさんの粋な一言。「今飲んでいるグラスは洗うのが面倒くさいから、そのまま持って帰ってください」。みんな記念に持ち帰りました。「備品も要らないので、どんどん持って帰って」という言葉に甘えて、私もフード・メニューやドリンク・メニュー(木のボードにクリップで留めるタイプ)、備品のペーパーバックなども思い出として手元に残すことにしました。


私個人は2014年3月のオープンから、コロナ禍も含めて200回くらい通いました。コロナ前の金曜夜はいつも満席で、UK本国のように外で飲んでいる人も居るくらいでしたが、コロナ禍のある夜はお客が私しか居なく、カウンターでスタッフと3人で話しながら飲んでいたときも。思い出はビールだけではありません。Nitro Cold Brewの提供の関係で開催されたGLITCH COFFEE & ROASTERS代表・鈴木清和さんのセミナーも、この店で体験しました。振り返ると、BrewDog Bar Roppongiは「飲む場所」というより、好きなカルチャーが重なっていく場所だったのだと思います。


24時ちょうどに外へ出て、最後に見た六本木店の外観が、妙に静かでした。遅れてやってきた、祭りが終わったという実感。


年が明けて、BrewDog.comBar Locatorを開きました。「Roppongi」は見当たりませんでした。やっぱり、あの夜は夢じゃなかったです。LondonのWaterloo店で撮った各店のフラッグが並ぶ写真があります。そこにRoppongiの旗もあった……と思い出してから、ふと、胸が詰まりました。11年10ヶ月、お疲れさまでした。


近いうちに、また日本のどこかで、BrewDogの拠点でみんなで乾杯できますように。

基本情報

  • 店名:BrewDog Bar Roppongi

  • オープン:2014年3月1日

  • クローズ:2025年12月28日

《わたる》
わたる

わたる

ただのクラフトビール・ファン。ITマーケター、最近はFintech/Web3にも関心を持ちつつ、国内外のビール文化を探訪。2014年、BrewDog六本木でのPUNK IPAとの出会いをきっかけにBREWDOGの世界観に心を奪われ、スコットランド工場や英米各地のバー、ホテルを訪問。また、日本の地方ブルワリーを巡り、人の情熱に触れる旅を続ける。BREWDOG CHARTERの「We are on a mission to make other people as passionate about great craft beer as we are.」を心に、人とのつながりの中心にクラフトなビールを置く。合い言葉は「KANPAI🍻✨️」。