2011年3月11日に発生した東日本大震災。その年の11月、東北のクラフトビールブルワリーが「ビールで恩返しをしたい」という想いで立ち上げたのが「東北魂ビールプロジェクト」です。

震災で多くの支援を受けた東北のブルワリーが、品質の高いビールを醸すことで恩返しをしたい——。そんな思いから始まったこのプロジェクトは、今年で15年目を迎えました。
このプロジェクトの特徴は、普段は競合関係にあるブルワリー同士が技術やレシピを共有しながら同じビールを醸造することです。毎年テーマとなるビアスタイルを決め、同一レシピを各ブルワリーがそれぞれの設備と技術で仕込み、完成したビールを比較しながら品質向上を目指しています。

2026年のテーマはIPL(インディア・ペールラガー)です。IPAのようにホップの香りを効かせながら、ラガー酵母によるクリーンな飲み口を併せ持つスタイルです。さらに今年は、参加ブルワリー16社を2つのチームに分けて異なる酵母で仕込むという新しい試みが行われました。ひとつはドイツ系ラガー酵母W-34/70。もうひとつは、柑橘やトロピカルな香りを引き出すSH-45です。

同じレシピでも、酵母や醸造環境の違いによってどのような味の違いが生まれるのか。2026年3月8日に開栓イベントが開催された、東京・赤坂の「CRAFT BEER SERVER LAND AKASAKAMITSUKE(クラフトビア サーバーランド 赤坂見附)」で、実際に15液種を飲み比べてみました。

W-34/70チーム(フルーティー&クリーン派)
蛍火醸造(青森)
東北魂IPL|ABV 6.0%

口当たりのフルーティさが印象的でした。ラガーでありながら柔らかな香りの広がりを感じます。
いわて蔵ビール(岩手)
東北魂IPL|ABV 6.0%

ラガーらしいどっしりとした骨格が感じられ、安定感のある味わいでした。
秋田あくらビール(秋田)
あくらペールラガー|ABV 6.0%

5種類のホップを使用していることもあり、口当たりから余韻までさまざまな表情が感じられます。時間とともに変化する味わいが印象的でした。
石巻ホップワークスーISHINOMAKI HOP WORKS(宮城)
石巻海風IPL|ABV 7.0%

すっきりと爽やかな印象で、ホップ由来のシトラス感が際立っています。
ブラックタイド ブリューイングーBLACK TIDE BREWING(宮城)
#480 Tohoku Pride|ABV 6.0%

ホップの華やかな印象とモルトの甘みが同時に訪れるバランス型のビールです。
米沢ジャックスブルワリー(山形)
東北魂 愛のペール・ラガー|ABV 6.0%

キリッとした苦味とホップの香りが強く感じられ、力強い印象のIPLでした。
ホップジャパンーHOPJAPAN(福島)
福島Yell|ABV 6.0%

非常にライトな口当たりで、柑橘を思わせる爽やかな印象。軽快に飲み進められるビールでした。
SH-45チーム(柑橘&トロピカル派)
奥入瀬ビール(青森)
SPL|ABV 6.0%

トロピカルなアロマから始まり、後半にしっかりとした苦味が現れるバランスの良いビールです。
遠野麦酒ZUMONA(岩手)
東北魂IPL|ABV 6.0%

印象を一言で表すなら「ビター」。ラガーの違う側面を見た印象でした。
ノイモンド ブルーイングーNOYMOND BREWING(岩手)
Slow Arc IPL|ABV 6.0%

グラスに近づけた瞬間に華やかな香りが立ち上がり、爽やかな口当たりの後にしっかりとした苦味が続きます。
半田銀山ブルワリー(福島)
半田颪IPL|ABV 6.0%

軽快な飲み口の中に香りと苦味が自然に流れ、小気味よく飲み進められるビールです。
ホップドッグ ブルーイングーHOPDOG BREWING(秋田)
東北エモーション 東北魂IPL|ABV 6.0%

切れのある苦味とフルーティなアロマを同時に感じられる、洗練された印象のIPLでした。
希望の丘醸造所(宮城)
岩沼汐風IPL|ABV 6.0%

クリーンな飲み口の中に幾層にも重なるアロマを感じる、奥行きのあるビールです。
福島路ビール(福島)
東北魂IPL|ABV 6.0%

すっきりとした飲み口ながら、ホップの苦味と香りが複雑にまとまった軽やかな仕上がりでした。
田沢湖ビール(秋田)
ハルノアイペールラガー|ABV 5.5%

ラガーらしい喉越しに加え、柑橘を思わせるホップの香りが広がり、充実感のある一杯でした。
同じレシピでも味は変わる

今回の飲み比べで最も印象的だったのは、同じレシピでもブルワリーごとに味わいが大きく変わることです。水質、設備、発酵管理、ホップの扱い方。そうした醸造の違いが、同じIPLでもそれぞれの個性を生み出していました。それこそがクラフトビールの面白さであり、互いに技術を共有しながら品質向上を目指す東北魂ビールプロジェクトの魅力でもあります。

なお、今回参加した16社のうち、スプリングバレーブルワリーのIPLは3月16日にSVB東京店舗限定でリリース予定とのこと。酵母の種類は現時点では公表されていませんが、どのような仕上がりになるのかも気になるところです。
震災から15年。東北のブルワリーが協力して醸し続けてきたこのビールは、単なるコラボレーションを超え、東北のクラフトビール文化の歩みを象徴するプロジェクトと言えるのではないでしょうか。








