奥多摩で祝うVERTERE10周年。21種のビールとともに体験する“ここに来る理由”

奥多摩で祝うVERTERE10周年。21種のビールとともに体験する“ここに来る理由”
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  • 奥多摩駅
  • 駅前のVERTERE ボトルショップ
  • 醸造所会場へのシャトルバス乗場
  • 奥多摩駅前の交差点
  • 奥多摩の新緑
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東京・奥多摩のブルワリーVERTERE(バテレ)が、醸造開始から10周年を迎えたことを記念し、イベント「VERTERE Anniversary Festival -10th Anniversary-」を醸造所敷地内で開催。ということで、JR青梅線を乗り継ぎ奥多摩へ向かいました。

奥多摩駅

4月19日、VERTEREの10周年イベント2日目。駅から会場まではシャトルバスも運行していましたが、次の便まで15分あるとのこと。せっかくならと、歩いて向かうことにしました。

奥多摩の新緑

視界に入る山々は、濃い緑とやわらかな新芽の黄緑が入り混じる春の色。新緑が太陽の光を受けてきらきらと揺れ、道中には満開の八重桜も咲いていました。淡いピンクが奥多摩の春を静かに彩っています。

この風景そのものが、すでにイベントの一部のように感じられました。

VERTEREのビールのみ21液種が並ぶ会場

会場に到着すると、すでに多くの来場者がビールとフードを楽しんでいました。家族連れやカップル、飲み仲間らしき集団に加え、一人で訪れている方も多く見られます。特定の層に偏らず、誰もが自然に溶け込める空気が印象的です。

会場内の様子

醸造設備のある建物の前には白いテントが4つ並び、ひとつはチケットブース、残る3つはビール提供ブースとなっていました。チケットの販売ブースでは、当日チケットのほか、前売りでの購入者はチケットとともにオリジナルラバーキーホルダーがもらえました。

ビールチケットと前売り購入者特典のキーホルダー

ビールのテントは奥から8液種、中央に8液種、手前に5液種とジンの提供。合計21種類ものビールが並びます。単独のブルワリーでこのラインナップが一望できる光景は、圧巻でした。

当日提供されたビール一覧(全21タップ)

初日の4月18日(土)とは樽が変わっていたかもしれませんが、2日目、4月19日(日)の12時の時点では以下のビールが繋がっていました。

ビールブース1

1.Anniversary Festival(アニバーサリー フェスティバル)/Hazy IPA/7.0% *会場限定ビール
2.Erato(エラトー)/Lager/5.5%
3.Efulensia(エフレンシア)/IPA/6.0%
4.Violacea(ヴィオラセア)/Belgian IPA/7.0%
5.Casimiroa(カシミロア)/NE IPA/7.5%
6.Magnolia(マグノリア)/DIPA/8.0%
7.Persica(ペルシカ)/Peach Gose/6.0%
8.Tenera(テネラ)/Session Hazy/4.0%

ビールブース2

9.Salix(サリックス)/Dark Lager/5.0%
10.Iris(アイリス)/Cold IPA/6.5%
11.Spinosa(スピノザ)/Single Hop IPA/7.0%
12.Passiflora(パシフローラ)/Hazy IPA/7.0%
13.Tilia(ティリア)/Belgian Quad/10.0%
14.Coffea(コフィア)/Coffee Stout/7.5%
15.Nemophila(ネモフィラ)/West Coast Pilsner/6.0%
16.Typhina(ティフィナ)/Modern Pilsner/5.5% *奈良醸造コラボ

ビールブース3

17.Lupulus(ルプルス)/American Pale Ale/5.5% *Barth Haasコラボ
18.Frustum(フラスタム)/Hazy IPA/6.5% *ISEKADOコラボ
19.Viburnum(ビバーナム)/Boysenberry Sour w/White Chocolate/6.5% *INKHORNコラボ
20.10th.Anniversary(10th.アニバーサリー)/Grape Sour/8.5%→(途中から)20.Eugenia(ユージニア)/NZ IPA/7.0%
21.Heliconia(ヘリコニア)/Hazy IPA/7.0%

実際に飲んだ10杯から見える、VERTEREの幅

その中から10種類のビールを実際に飲みました。

Anniversary Festival(アニバーサリー フェスティバル)/Hazy IPA/7.0%

・Anniversary Festival(Hazy IPA/7.0%)
柔らかな口当たりの中にホップのアロマが広がる、10周年を象徴する一杯です。

・Erato(Lager/5.5%)
クリーンで軽やかな飲み口。奥多摩の空気とよく合います。

・Efulensia(IPA/6.0%)
ホップの香りと苦味のバランスが良く、安定感があります。

Violacea(ヴィオラセア)/Belgian IPA/7.0%

・Violacea(Belgian IPA/7.0%)
スパイシーなニュアンスとホップの香りが重なる、個性的な仕上がりです。

・Typhina(Modern Pilsner/5.5%)*奈良醸造コラボ
キレのある飲み口にホップ感が加わっています。

・Lupulus(American Pale Ale/5.5%)*Barth Haasコラボ
華やかなアロマと軽快な飲み心地が印象的です。

・Frustum(Hazy IPA/6.5%)*ISEKADOコラボ
ジューシーで厚みのあるボディが特徴です。

Viburnum(ビバーナム)/Boysenberry Sour w/White Chocolate/6.5%(INKHORNコラボ)

・Viburnum(Boysenberry Sour w/White Chocolate/6.5%)*INKHORNコラボ
ベリーの酸味と甘さが重なるユニークな一杯で、特に印象に残りました。

・Eugenia(NZ IPA/7.0%)
トロピカルな香りと爽やかな苦味のバランスが良好です。

・Heliconia(Hazy IPA/7.0%)
なめらかな口当たりとアロマの広がりがあり、完成度の高さを感じます。

会場限定の「Anniversary Festival」は、行ってすぐに注文しました。午後の中盤で完売していたので、ひとまず安堵。これだけ飲んでもようやく半分なので、バテレの醸造量、スタイルの幅広さに圧倒されます。

創業者二人に聞く、VERTEREの現在

左から、鈴木光代表、辻野木景醸造長

10周年を迎えたVERTEREの代表の鈴木光氏と醸造長の辻野木景氏。訪問時は二人ともテントの下でビールを注ぎ、列をさばいていましたが、夕方近くなるとだいぶ落ち着いてきたので、お話を聞くことができました。

――今回の10周年イベント、率直な感想はいかがですか?

「ある程度は想像通りではあるんですが、人数的には想像以上に来ていただいたかなという印象です」

「顔見知りの方も多いんですが、それに加えて“初めて来ました”という方がかなり増えています」

――新規の方が増えている?

「そうですね。永福町や横浜にタップルームを出したことで、そこから来てくださる方が増えている印象です。僕たちは初めてでも、スタッフとは顔見知りというお客様も多くて」

――それは理想的な広がり方ですね。

「本当にそうですね。最終的にはいろんな場所に店舗があっても、“ここに来たい”と思ってもらえるような形にしたいと思っています」

――今回のアニバーサリービールについて、スタイルがヘイジーだったのは意外でした。

「ヘイジーにしたのは、特に大きな理由はないんですけど、まぁちょっと、皆さんに楽しんでいただくっていう意味で、まあ“皆さんが飲めるもの”じゃないですけど、“ハマるもの”っていう感じですかね。なんかそのあたりが大きいですかね。」

「あと、実験品種のホップが少し余っていて、“特別感があるものを”と思っていた時に、ちょうどこれあと5キロだけあってどうしようかなと思ってたんで、もうじゃあこれを今回使い切っちゃおうと。」

――駅から歩いてきたんですが、山の新緑も印象的でした。

「今ちょうど新緑も生えてきたんで、ちょっと山がモコモコしだして、今一番綺麗かもしれないです。」

「本当に2週間前くらいだったら全然、枯れててっていうか、葉っぱがなくてみたいな。」

「(敷地内の桜を指さし)あれとかは桜ですが、あれは去年ドンピシャだったんですよ、このイベントに。今回はちょっと早くて。」

――あれは植えたんですか?

「これはもともと植わってて。もともとこの土地が奥多摩の老人ホームが建っていて、こっちが結構ひどい崖なので、安全対策であっち側に移転したんですよ。で、ここ更地になって、じゃあ町としてどうやって使うかっていう話になった時に、 JRさんと私たちでここに醸造所を作りたいっていうことで提案して、で、まあ醸造所ができるんですけど。」

「その時に老人ホームのここを所有してた方から、この桜だけは残してほしいって。」

「なので、今でも咲き始めると、知らないおじいさん、おばあさんが、ここにやって来て見上げてます(笑)。」

「初めてそれが起こった時は『すいません、ここ今ビール屋の敷地で』とか言ったら『大丈夫、大丈夫』って言われて(笑)」

――お客さんの飲み方にも特徴はありますか。

「奥多摩に来る方はアウトドア系の方も多いので、体力があってよく飲むんです」

「最初は“1人2杯くらい”で想定していたんですが、実際はそれ以上飲まれる方が多くて、いい意味で計算が外れました」

――タップルームも東京都内だけかと思ったら横浜にも作ったっていうところもあって、地方さらには海外への進出は?

「輸出は普通にアジア圏は結構してて。店舗はちょっと考えてないですね。」

――この場所の今後については?

「ちょっと敷地内が坂だらけで、イベント開催時に“あの机どこに置こう”っていうのは結構あるんですけど、数年以内にここ全部ウッドデッキにしようと思ってます。ちょっと使いにくすぎて。」

「イベントも、年々やっぱりお客さん増えてきているので、ここがフラットになればねって話はいつも出るので。」

――ここ最近、ブルワリー×宿泊の動きがありますが、奥多摩の環境を活かして、宿泊施設の展開についてはどうですか?

「宿泊施設は多分うちでは作らないと思うんですけど、協力して一緒にやりたいというところがあれば、やってもいいかなというか。」

「運営オペレーションはちょっとうちでは、24時間何があっても大丈夫なように対応するというのはちょっと難しいので。まあ、ホテルとか旅館を運営している会社さんが一緒にやりましょうと言ったら、全然うちはできるっていう感じですかね。」


途中、フードで参加していた下北沢のSUNNY HOPのオーナー、CRUDEさんも交え、終始和やかにお話しできました。鈴木さんと辻野さんは高校、大学の同級生ということで、仲の良さがにじみ出ている、そんなひとときでした。

奥多摩で積み重ねられた10年のかたち

会場内の様子

奥多摩での10周年イベントは、単なるアニバーサリーではなく、これまでの積み重ねが可視化された場だったように感じます。

21種類のビールが並ぶ光景は、ラインアップの豊富さ以上に、これまでの試行錯誤や挑戦の蓄積そのものでもある気がします。定番からコラボ、周年ビールまでが同時に存在することで、VERTEREというブルワリーの現在地が立体的に見えた、そんな感じががしました。

実際に杯を重ねていくと、その幅の広さとバランスの取り方がより明確になります。飲みやすさに振り切るわけでもなく、強い個性だけを押し出すわけでもない。その中間にある“ちょうどいい強度”が、結果として多様な来場者を受け入れる余地になっているようにも感じられました。

そして、そのビールを支えているのが、この奥多摩という場所です。山の空気や季節の移ろい、土地に残る記憶までも含めて、ここでの体験は成立しています。都市のタップルームでは再現できない価値が、確かにここにはありました。

インタビューの中で語られていた「最終的にはここに来たいと思ってもらえる場所にしたい」という言葉は、そのすべてを象徴しています。永福町や立川、横浜といった新しい拠点から人が流れ、最終的に原点の奥多摩にたどり着く。その循環が少しずつ形になり始めていることも、今回のイベントから見えてきました。

クラフトビールの世界では、ビールそのもののクオリティはすでに前提となりつつあります。その先にあるのは、「どこで飲むか」「誰と飲むか」「どう過ごすか」といった体験の設計です。VERTEREが10年かけて築いてきたのは、まさにその部分なのではないでしょうか。

奥多摩で飲むということ。それは一杯のビールを超えて、場所と時間を味わう行為でもあります。

今回の10周年イベントは、その価値をあらためて実感させる機会となっていました。

【イベント概要】
VERTERE Anniversary Festival -10th Anniversary-
2026年4月18日(土)・19日(日)*すでに終了
VERTERE 醸造所敷地内(東京都西多摩郡奥多摩町氷川1099)
時間:11:00~17:00(10:30開場)
入場料:無料

《BEERMAPS編集部》