京都府福知山市、JR福知山駅から徒歩5分の駅前商店街に佇む『CRAFT BANK(クラフトバンク)』。昭和10年創業の銀行をリノベーションした店内で、仕込みタンクを眺めながら7タップのクラフトビールと40品目の料理を楽しめるブルワリーです。
2022年7月のオープン以来、地元・福知山の人々はもちろん、京都市内や大阪、東京からも多くのビールファンが足を運んでいます。

今回は、そんな「CRAFT BANK」のCEO兼ブルワーを務める羽星大地(はぼし だいち)さんにインタビュー。ビール業界に飛び込んだきっかけから、銀行跡地ならではの店舗の見どころ、地元の恵みを生かしたビールづくりのこだわり、そして「ビール融資」という驚きの構想まで、じっくりとうかがいました。
『CRAFT BANK』の出発点。地元・福知山へのUターンと宮崎での修行

「なんとなく楽しそう、かっこよさそう」。そんな素朴な感覚から、ビール業界に興味を持ったという羽星さん。もともと東京でIT系の仕事をしており、ビールは好きだったものの、クラフトビールはたまに飲む程度だったそうです。
AIやバーチャルの時代が来ることが予想できるなかで惹かれたのは、クラフトビールとコミュニティの関係性でした。クラフトビールが好きな人たちの熱量や、ビールイベントの盛り上がりに衝撃を受けたことも、ビールづくりを始めようと思ったきっかけの一つなのだとか。
「地元の福知山で事業を興したい」という想いもあったことから、コロナ禍で一念発起し、20代のうちに地元の京都・福知山にUターンしたといいます。
羽星さん:何年か先に自分がどのような時間を過ごしたいかを考えたときに、気心知れた仲間とお酒を飲み交わす時間がとても大切だと気付き、そのような場所を自分で作れたら良いなと思いました。
福知山に戻ってきた時点では、明確なビジョンがあったわけではありません。そのため、クラフトビール事業の準備を進めながら、空芯菜やパプリカなどの農業にもチャレンジしたそうです。
銀行跡地を押さえていた仲間との運命的な出会い

羽星さんが福知山でビールづくりを始めたい旨を各所で話していると、それを聞きつけたCFO兼ブルワーの庄田健助(しょうだ けんすけ)さんから突然連絡が来ます。それが、二人の出会いでした。
羽星さん:学生時代からクラフトビールが好きな庄田は、福知山駅前通り商店街の銀行跡地をブルワリーとして活用するために、すでに物件を押さえていたんです。僕はちょうど物件を探していたので、ベストタイミングでした。
旧銀行のビルは3階建てで屋上もあり、フレキシブルに使える点も決め手のひとつ。現在は屋上テラスでビアガーデンを開いたり、ワークスペースやイベントスペースを設けたりと、ビルを余すことなく活用しています。


「失敗してはいけないから、うちで修行しなさい」宮崎ひでじビールでの2か月
ブルワー経験のなかった羽星さんと庄田さんが修行先に選んだのは、宮崎県延岡市の「宮崎ひでじビール」。福知山駅前通り商店街でテナント誘致などに取り組む仲間が、宮崎に縁を持っていたことがきっかけでした。
栗農園を営むメンバーとは「栗のビールといえば、宮崎ひでじビールの“栗黒”が有名だ」という話で盛り上がり、さらに宮崎ひでじビール近くの道の駅と縁があるメンバーもいたのです。
羽星さん:宮崎まで視察に行き、若いメンバーで街づくりに力を入れていることや、ビールづくりを始めたいという想いを伝えました。すると、宮崎ひでじビールの社長から「ビールづくりは失敗してはいけないから、うちで修行しなさい」とお誘いいただいて。未経験にもかかわらず、修行させていただけることになったんです。

ビールづくりの基礎を徹底的に学んだ約2か月の修行期間は、毎日必死で楽しかったと、羽星さんは当時を振り返ります。
羽星さん:宮崎ひでじビールは規模が大きいので、仕込みから充填までの一連の工程を毎日行えます。レシピの組み方も教わり、2か月で1年分くらいの作業を経験できました。
「ビール片手に、なんかやろう。」コミュニティスペースとしての『CRAFT BANK』

宮崎ひでじビールでの修行を終えた二人がまず取り組んだのは、銀行跡地の改装でした。地域の方々やプロの手を借りながら、二人でDIYして『CRAFT BANK』を作り上げたそう。

カウンターや金庫室、天井には、銀行時代の面影が色濃く残っています。「特別窓口」と書かれた置物や、現在レジとして活用している手提げ金庫も当時のまま。
羽星さん:カウンターの天板やサイドには、福知山の伝統工芸である和紙と、漆で塗装した板を貼っています。銅色の漆、銀色のタンク、金色のタップと、金銀銅の配色もこだわりです。照明だけあと少し工夫したいところですが、この内装はとても気に入っています!


福知山のコミュニティスペースの役割を継承する
羽星さんが子どもの頃はとても賑わっていたという福知山駅前通り商店街。
近くに大型のショッピングモールができたことで一時期はシャッター街となっていましたが、ここ10年で10以上のテナントが新たに入り、商店街として生まれ変わりつつあるそうです。
旧銀行は20年前に廃止されるまで地域の人に開かれた場所でした。当時から残る黒板には、卓球大会を開催した形跡が残っているのだとか。
羽星さん:コミュニティスペースとしての役割は、そのまま残したいと思っています。建物のスペースを活用して新たなチャレンジをしたい人も全力で応援したいですね。
実際に、常連さん同士が仲良くなり新たな活動を始めたこともあるのだそう。『CRAFT BANK』を起点にしたコミュニティが着実に広がっていることがうかがえますね。
福知山の水が生む、何杯でも飲めるクラフトビール。『CRAFT BANK』の醸造へのこだわり

『CRAFT BANK』のビールづくりは、味のインパクトよりも、1リットルのジョッキでも飲めるような仕上がりを目指しているのだとか。
羽星さん:宮崎ひでじビールで工場長や醸造責任者の方が「違和感無く身体に入ってくるビールは大切だ」と仰っていて、それは『CRAFT BANK』のビールづくりでも意識しています。アルコール度数はあまり高くしておらず、面白みにかけるかもしれませんが、それが個性でもあると思っています。
仲の良いブルワリーの人からは「特有の味がある」と言われるそうで、福知山の水質も『CRAFT BANK』のビールのキャラクターに関係しているのかもしれません。
地元の恵みを循環させる

ビールの原材料には、丹波の栗や黒豆など、京都ならではの材料が使われることも。京都の天然酵母は、面白い味わいのビールを造れるそうです。
羽星さん:京都の与謝野町ではホップを生産していて、『CRAFT BANK』の7月の周年祭とホップを収穫するタイミングが重なります。ですので、周年祭に来てくれたお客さんと一緒にホップ畑で収穫して、持って帰ってタンクに入れてビールを造るというイベントも開催しています。
さらに、毎年冬に仕込む「YUZU BRUT」は、柚子生産の発祥の地と呼ばれる京都の水尾から完熟ゆずを仕入れ、その果皮を使用。地元の恵みをビールの原材料として使用することで、それらがより広く知られるという循環も目指しています。
羽星さん:県外に住む福知山の人が、ビアバーなどで「地元のビールだから」と『CRAFT BANK』のビールを飲んでくれたら嬉しいですね。福知山の人が地元を語る際に、自慢できるような店になりたいです。
編集部も注目!『CRAFT BANK』の定番&おすすめクラフトビールをご紹介
BANK IPA

香り豊かな9種類のホップをふんだんに使用した、『CRAFT BANK』の定番IPA。フレッシュな柑橘の香りと、後を引かない爽快な苦みで、前向きな気持ちにスイッチが入ります。
まさに、『CRAFT BANK』のスローガンである「ビール片手に、なんかやろう。」を表現する味わい。シーンを選ばず飲めるライトな口当たりで、様々な料理に合うバランス感もあります。
ビール名:BANK IPA
スタイル:IPA
アルコール度数:5.5%
EL CLASICO

福知山の人気スペインバル「にしむらーの」の西村シェフとのコラボビール。スパイスの効いたスペインの伝統的なサングリアをイメージし、ブドウ果汁・オレンジピール・ホップ・八角・シナモン・クローブを使用しています。
フルーティーな甘みのなかにスパイシーな香りが広がり、最後にビールらしい苦みが顔を出す複雑な味わい。
「にしむらーの」は2026年3月に惜しまれつつ閉店しましたが、その名はラベルに残り続けます。

ビール名:EL CLASICO
スタイル:Spice Ale
アルコール度数:7.0%
ビールが“旗印”になる。福知山で『CRAFT BANK』が描く「ビール融資」構想とこれから

現在、1,000リットルのタンクが4本並ぶ『CRAFT BANK』。製造量の拡大を計画中で、コラボビールなどの新たな展開にも期待がふくらみます。さらに「超プレミアムライン」の製造も視野に入れているそうです。
なかでもユニークなのが、羽星さんが検討中の「ビール融資」という構想です。“ビールが一つの旗印となって人が集まる”という経験から生まれたアイデアで、新たな事業などに挑戦したい人にビールを数百本渡し、仲間集めやコミュニティづくりに活用してもらうというもの。
ビールを通した地域の活性化やコミュニティとしての役割に加えて、『CRAFT BANK』が文字どおり“BANK(銀行)”としての役割を担う日が来るかもしれません。
最後に、読者へ向けてメッセージをいただきました。
羽星さん:醸造所に足を運ぶことは、ビールの楽しみ方の一つだと思います。『CRAFT BANK』は銀行跡地という唯一無二の場所なので、足の運び甲斐がありますよ!福知山は鴨鍋の名店をはじめ、地域ならではの美味しい食事もあり、ちょうど一泊二日くらいで楽しめる街なので、ぜひ福知山まで遊びに来てください!
福知山の街と共に進化する『CRAFT BANK』の今後が楽しみです!
店舗概要
店舗名:CRAFT BANK
住所:京都府福知山市南本町264-5
アクセス:JR「福知山」駅徒歩5分
営業時間:水・木・金 17:30~23:30/土・日 13:00~23:30
定休日:月・火
支払い:クレジットカード・電子マネー・QRコード
公式サイト:https://www.craftbk.net/








