
今回訪れたのはシンガポール。 ここは僕にとってただの旅行先ではありません。 家族で暮らし、日常を重ねた「第二の故郷」です。
飛行機を降り街の湿った空気を吸い込むたび、 記憶の奥にしまっていた時間が静かに動き出します。旅先でその街の空気をいちばん早く感じられる場所。 僕にとってそれはいつもクラフトビールの店です。ブルワリー運営に関わっていた頃から、 海外に行けば必ずその土地のビール文化を歩いて確かめてきました。
今回久しぶりにこの街へ戻る中でどうしても最初に立ち寄りたかった場所があります。日本人オーナーが営むクラフトビアパブ 「SG Taps」。この店から、今回のシンガポールのビール旅を始めました。
店の第一印象

チキンライスが有名なマックスウェルのホーカーセンターで食事を終え、汗を拭きながら5分ほど歩くと「SG Taps」に到着。テラス席はすでに満席。グラスを傾けながら笑い合う声が外までこぼれていました。外の空気も気持ちよさそうだったけれど、今回はどうしても店の方にシンガポールのビールシーンについてお話しを伺いたかったので店内へ。
扉を開けた瞬間、 それまでの常夏の街の明るさがふっと切り替わります。少し落とした照明。 静かに流れる空気。 冷房の効いた心地よさ。“知る人ぞ知るバー”の温度がそこにはありました。足早に席に腰を下ろし、 まずは一杯目を注文。ビール旅のスタートです。

飲んだビール①

Brewlander - Freedom Lager / Lager / 4.7%
乾いた喉にまずはラガー。グラスを傾けると軽やかな液体がすっと喉を通り、思わずもう一口続けてしまう。苦味は前に出ず、なめらかに喉を流れていく。爽やかな香りとやさしい甘みが後から追いかけてくる。気づけば「もう一杯」を注文したくなるタイプ。Brewlanderは「シンガポールのビールを世界地図に載せる」という使命を掲げるブルワリー。現地でも規模の大きい存在で、 挑戦を止めない姿勢が伝わってきます。
飲んだビール②

Pink Blossoms Brewing - Let It Be - Diana / Rice IPA / 7.8%
柑橘のニュアンスと穏やかな甘みがありながら、飲み口は軽やかでスムーズ。すっきりとした後味で、なめらかな口当たりが印象的なHazy IPAでした。オーナー広瀬さんおすすめのブルワリー。Hazyを積極的に仕込んでいて、 回転率の低い店舗には樽を卸さないという徹底ぶり。 フレッシュな状態で飲んでほしいという意思が伝わります。地元でも屈指の人気ブルワリーで、 SG Tapsはほぼ唯一の取り扱い店とのこと。


今回は残念ながらフードはいただけませんでしたが、メニューは種類も多く選ぶのに迷ってしまいそうでした。一人でも仲間とでも、シーンに合わせて使いやすそうです。
お店のストーリー

SG Tapsは2018年オープン。独立以前からシンガポールのクラフトビールを追い続けてきたオーナー広瀬さんから話を聞くと、ローカルブルワリーへの深いリスペクトが言葉の端々から伝わってきます。
シンガポールではHazy IPAが圧倒的人気。日本よりHazyの到着は早く、流行はすでに3周目なんだとか。3度目で確固たる地位を築きあげたそうです。なんとHazyはウィスキーやワインといった他のお酒と並んで一つのカテゴリーとして扱われているほど。インターナショナル企業が多く集まるこの国では、海外のビールトレンドにも敏感なことも頷けます。
客層はまさしく多国籍。さまざまな言葉が交差する店内で、それぞれがグラスを囲んで会話を楽しんでいました。まさにシンガポールらしい空間。ただその一方で、シンガポールのビール業界は決して安定した世界ではありません。ビジネスの競争は激しく、創業からわずか1年で姿を消してしまうブルワリーも珍しくないとのこと。
そんな厳しい環境の中でも、広瀬さんは日本のクラフトビールにも強い関心を寄せています。Baird Beer、いわて蔵ビール、スワンレイクビール、TWO RABBITS BREWINGはすでに輸出ルートがあり、現地でも少しずつ存在感を広げているそうです。さらに、West Coast Brewing、UCHU BREWING、Totopia Breweryなども取り扱いがあるとのこと。
まとめ

シンガポールにきたら、まずはSG Taps へ!
広瀬さんは現地のクラフトビール事情に精通しているので、ここで情報を集めてからビール旅を始めるのもおすすめです。そして印象的だったのは、 ここが単にビールのサービスをするだけに留まらず、ブルワリーの背景まで含めて紹介していること。造り手のストーリーやカルチャーを理解し、自分もファンの1人として語る。そんな素敵なお店でした。訪れた際にはぜひお立ち寄りください。
蒸し暑い空気の中を歩き、 多国籍の人々が行き交う街でグラスを傾ける。シンガポールは、ビジネスも文化も常に動き続ける都市でした。ブルワリーの誕生と淘汰が繰り返され、その中で新しいビール文化が次々と現れていく。だからこそ、この街のビールには独特の文化が宿ります。
今回の旅は、その空気を改めて肌で感じる時間になりました。
・店舗名 : SG Taps
・住所 : 13 Duxton Hill, #01-01, Singapore 089597
・アクセス: MRT トムソン・イーストコースト ライン Maxwell Station (マックスウェルステーションから徒歩5分)
・電話番号 : +65 6221 8508(Singapore)
・営業時間 : 月・火・水・木・土・日曜 12:00~23:30 、金曜 12:00~24:00
・公式Instagram








