ととのいのあとに、クラフトビールがある風景|東京・高尾山口「TAKAO 36 SAUNA」という完成されたサウナ体験

TAKAO 36 SAUNA 外観
  • TAKAO 36 SAUNA 外観
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  • 川沿いの桜とTAKAO 36 SAUNA
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  • 醸造所(CRAFTROCK BREWING TAKAO)

サウナのあとに、なぜクラフトビールなのか

クラフトビールとサウナ。この組み合わせは最近よく見かけるようになった。ただ、高尾にある「TAKAO 36 SAUNA」は、その関係をもう一歩先に進めている。サウナのあとにビールがあるのではなく、ビールがある前提でサウナが設計されている。

川沿いの桜とTAKAO 36 SAUNA

訪れたのは雨の日。桜の季節ということもあり、案内川沿いには薄く霞んだピンクが連なっていた。京王線・高尾山口駅を出て右へ。川を渡り、甲州街道を2分ほど歩くと、白い建物の壁面に大きく「36サウナ」の文字が現れる。ガラス越しに見える銀色の醸造タンクが、この施設の性格を静かに主張している。

醸造所とサウナが同じ建物にあるということ

TAKAO 36 SAUNA外観

1階はクラフトロックが手がけるタップルーム「CRAFTROCK TAP ROOM」。2~3階がサウナ施設「TAKAO 36 SAUNA」。

TAKAO 36 SAUNA、CRAFTROCK TAP ROOM 入口

2階の受付を兼ねたラウンジには「36 KITCHEN」があり、サウナ後にそのまま食事やビールを楽しめる導線になっている。釜めしやカレーといった“サ飯”と並んで、1階で醸造されたクラフトビールが繋がっている。

サウナ体験そのものの完成度──設計としての「TAKAO 36 SAUNA」

2F ラウンジ/Courtesy of T.M.B.

「TAKAO 36 SAUNA」は、単にサウナ設備が充実している施設ではない。 体験の流れそのものが設計されている施設だ。サウナは2階<麓 fumoto>と3階<山 yama>の2フロア構成。男女入れ替え制に加え、1フロア貸切も可能という柔軟な運用になっている。

<musasabi>/Courtesy of T.M.B.

この日は2階<麓 fumoto>を体験。まず特徴的なのは、性格の異なる2つのサウナルームの配置だ。

ひとつは<anaguma>。

定員7~8名ほどのコンパクトな空間で、照明は落とされている。森の静かな闇をイメージしているというが、実際に入ると視覚情報が削がれ、自然と内側に意識が向く。目を閉じている時間が長くなる、瞑想的な設計だ。

もうひとつが<musasabi>。

こちらは一転して大空間。15名ほどが入れる広さの中央に、Harviaのストーブが2基並ぶ。オートロウリュが始まると、一気に熱が立ち上がる。単に温度が高いのではなく、空間全体の熱の密度が変わる感覚がある。

Harviaのストーブ/Courtesy of T.M.B.

この2室の対比によって、「静」と「動」の両方のサウナ体験が成立している。

水風呂も明確に設計されている。

ひとつは15℃。高尾山麓の地下水を使用しており、肌当たりが非常に滑らかだ。4人は同時にゆったり入れる広さと、肩までしっかり浸かれる水深。水面には無数のアヒルのおもちゃが浮かび、張り詰めた緊張を少しだけ緩めてくれる。

もうひとつは9℃。水深90cm以上のシングル設定で、完全に“玄人向け”。サウナで極限まで温まった身体を一気に冷やす設計で、交感神経から副交感神経への切り替えを強く促す。体感的には30秒も入れば十分すぎる。

左)温風呂、右)水風呂/Courtesy of T.M.B.

さらに、温風呂も見逃せない。

ハイキング帰りの利用を想定し、ヒノキやハーブの香りが広がる設計。水風呂と外気浴で一度整えた後、その余韻をもう一段階引き延ばす役割を持っている。水面に浮かぶ輪切りの木も含め、視覚的にも柔らかい。

そして外気浴。

天井の高い半外気浴テラスは、外と完全に切り離されてはいない。雨の日は湿度を含んだ空気が入り込み、時折、案内川の音が聞こえてくる。人工的に整えすぎないことで、山麓という場所性をそのまま取り込んでいる。

シャワーブースやドレッシングルームも抜かりない。

半個室型のシャワーには必要なアメニティがすべて揃い、清潔感も高い。ドレッシングルームは足触りの良い床材に加え、最新のドライヤーやヘアアイロンも用意されている。 体験の最後までストレスがない。

今回体験したのは2階<麓 fumoto>のみだったが、もうひとつのフロア、3階<山 yama>の存在も気になる。

ヒノキの香りが広がる屋内サウナ<fukurou>に加え、現在メンテナンス中のようだが、屋外にはバレルサウナ<kawasemi>が設置されているという。さらに、水風呂、露天風呂、そして外気浴のためのテラスが広がり、その先には高尾の山並みが抜けていく。

麓で感じた“整えられた体験”とは異なり、より開放的で、環境そのものに身を委ねるような時間になりそうだ。

次は、晴れた日の3階で、山の風を受けながらその続きを確かめてみたい。

その場で醸し、その場で飲む──「TAKAO 36 BEER」

CRAFTROCK TAP ROOM 入口

サウナを終えて2階のラウンジを抜け、階段を降り、そのまま1階のタップルーム「CRAFTROCK TAP ROOM」へ向かう。2階の36 KITCHENでもビールを楽しめるが、ビールにだけ集中したいので、今日はあえて1階へ。

CRAFTROCK TAP ROOM 店内

扉を開け中へ入ると、道路に面したガラス越しに、来る時に見た外の風景がそのまま視界に入る。その窓際から奥の壁面にかけて、L字型に長く伸びるベンチシート。視線は外へ抜けながら、身体はまだ内側に熱を残している。この距離感がいい。

CRAFTROCK TAP ROOM カウンター

ベンチの向かいには、同じく長く伸びるカウンター。その背面は白いタイルで覆われ、クラフトロックのアイコンでもある目玉のキャラクター「ロッキー」(最近名前が決まった)がパターンとして描かれている。そのタイル面に、整然と8本のタップが並ぶ。

クラフトロックの8液種が繋がるタップ

この日のラインアップは8液種。定番4種と限定4種、クラフトロックだからこそのスタイルの幅広さとサウナ客、ハイキング客にも対応した液種がそろっていた。。

  • DRINK ALL DAY / Kölsch / 5.5%(定番)

  • OCEAN AVENUE / Session IPA / 4.5%(定番)

  • ALTERNATIVE IPA / American IPA / 6.0%(定番)

  • JOY HOPPOSITES / Double IPA / 8.0%(定番)

  • JAM SESSION 2 / Fruit Session IPA / 5.5%(限定|韓国「SEOUL BREWERY」とコラボ)

  • SAUNA BEER / Fruit Ale / 5.0%(限定|36SAUNAコラボ)

  • SANSHO LAGER / Lager w/Budo Sansho / 5.0%(限定|八王子の鰻店「高瀬」のぶどう山椒を使用)

  • MOUNTAIN BEACH / West Coast Pilsner / 5.0%(限定|アメリカ「Riip Beer Co.」とコラボ)

サイズはレギュラー(280ml)とラージ(500ml)の2種類に加え、グロウラーへの量り売りにも対応している。

この中で選んだのは3杯。

「SAUNA BEER」は、この施設のために設計された一杯。フルーツエールらしい軽やかな酸味が立ち上がり、喉を潤すというより、身体に水分を戻していく感覚に近い。サウナとの接続を前提にした味わいだ。

SAUNA BEER / Fruit Ale / 5.0%

「SANSHO LAGER」は、時間差で効いてくる。最初はラガーとしての飲みやすさが前に出るが、少し落ち着いたタイミングで山椒の香りが立ち上がる。乾きが引いていく過程に寄り添うような設計。

SANSHO LAGER / Lager w/Budo Sansho / 5.0%

「MOUNTAIN BEACH」は、打って変わってホップの主張が明確だ。多層的なアロマと、しっかりとした苦み。いわゆるWest Coastらしさを持ちながらも、この場所で飲むことで、その輪郭がよりシャープに感じられる。

MOUNTAIN BEACH / West Coast Pilsner / 5.0%

印象的なラインアップ。定番で基礎を押さえつつ、限定ではコラボレーションを軸に構成されている。韓国、カリフォルニア、そして八王子の鰻店まで、そしてその中に「SAUNA BEER」。実にクラフトロックらしい。

ととのいのあとにある風景

TAKAO 36 SAUNA外観

TAKAO 36 SAUNAは、サウナとクラフトビールを並べた施設ではない。サウナ体験の中にクラフトビールがあり、クラフトビールを飲むためにサウナがある、その両方が成立している。

ととのいのあとに、ビールを飲む。その行為自体は珍しくない。ただ、その一杯がどこで、どうつくられ、どう飲まれるかまで含めて設計されている場所はまだ多くない。

高尾のこの場所には、すでにその“風景”ができていた。

【施設概要】
TAKAO 36 SAUNA(タカオサンロクサウナ)
住所:東京都八王子市高尾町2292
アクセス:京王線高尾山口駅から徒歩2分
営業時間:
・<通常営業>11:00~21:00(最終受付20:00)
・<深夜営業>11:00~23:00(最終受付22:00) 金・土祝日
定休日:木曜日
(木曜が祝日の場合は金曜日、ただし繁忙期は不定休・無休あり)

《BEERMAPS編集部》