ととのいのあとに、クラフトビールがある風景|錦糸町「黄金湯」がつくる銭湯×クラフトビール体験

黄金湯外観
  • 黄金湯外観
  • 黄金湯までの道のりから見える東京スカイツリー
  • 四ツ目通りを曲がるとすぐ、黄金湯の看板が目に入る
  • 黄金湯外観
  • 黄金湯外観
  • 黄金湯外観
  • 黄金湯外観
  • 黄金湯外観

東京・墨田区太平。

錦糸町駅北口から、東京スカイツリーを正面に見ながら四ツ目通りを押上方面へ歩くこと7分ほど。通りから少し入った住宅街の中に、黄金湯はある。

黄金湯までの道のりから見える東京スカイツリー

黄金湯は1932年創業。戦前から続く銭湯だ。2020年、この銭湯は大きな転機を迎えた。

東京下町エリアを代表する銭湯として知られる姉妹店「大黒湯」を手掛ける新保夫妻が、新たな銭湯のあり方を模索する中で全面リニューアルを実施。総合プロデュースおよびクリエイティブディレクションはアーティストの高橋理子氏、設計はスキーマ建築計画の長坂常氏が担当した。

黄金湯外観

従来の銭湯文化を残しながら、サウナ、クラフトビール、アート、そしてコミュニティ機能までを内包した新しい銭湯へと生まれ変わっている。

境界をつなぐ、スキーマ建築の設計

黄金湯外観

白い暖簾をくぐると、正面にはタイル張りの番台。その右手にはコンクリート打ち放しの壁に券売機が設置されている。下駄箱に靴を入れ、木製の鍵札を番台へ渡しロッカーキーを受け取る。昔ながらの銭湯の流れを残しつつ、空間全体は極めて現代的だ。

券売機

脱衣所へ進むと、木製ロッカーの上に大きな暖簾がかかっている。これは現代美術家・田中偉一郎氏による作品で、モチーフは銭湯で昔から男女の間で交わされてきた「お~~~い!」という呼びかけ。ただ、男湯側から見えるのは「お」の文字だけ。水曜日の男女入れ替え日に反対側へ行けば、もう片方の文字「い」が見えるはずなので、次回は水曜日に行ってみたいところ。

脱衣所 | Courtesy of Schemata Architects

スキーマ建築計画が黄金湯で重視したのは、“境界を完全に閉じないこと”だった。銭湯の男女境界壁は、全国の多くの銭湯と同様、天井まで届いていない。見えないけれど、気配は感じる。その独特の距離感を建築として読み解きながら、空間全体が設計されている。

漫画家・ほしよりこ氏による銭湯絵 | Courtesy of Schemata Architects

浴場の壁を覆うベージュのタイル、コンクリート躯体とのコントラスト、そして壁面に描かれた富士絵巻図。これは漫画『きょうの猫村さん』などで知られる漫画家・ほしよりこ氏による銭湯絵で、男女の境界をまたぐように富士山を中心とした物語が描かれている。

サウナ、水風呂、そして煙突を見上げる外気浴

浴場からサウナエリアに続く通路 | Courtesy of Schemata Architects

浴場奥の扉を抜けると、サウナエリアへと続く細い通路が現れる。間接照明に照らされたコンクリートとブロックの壁の通路を進むと、サウナ室と水風呂が姿を見せる。

サウナ室 | Courtesy of Schemata Architects

男湯のサウナは国産ヒバ材を使用したオートロウリュサウナ。一度に10人ほどが入れる広さがあり、室内には一般的な時計ではなく砂時計が設置されている。照明も落ち着いており、熱に集中できる空間だ。(一方、女湯のサウナは国産檜材を使用したセルフロウリュサウナを設置している。)

大水風呂 | Courtesy of Schemata Architects

サウナの目の前には、深さ90cmの大水風呂。地下から汲み上げた軟水をさらに軟水機に通した超軟水を使用した13℃前後の水は非常に柔らかく、深さと広さによる水の“量感”もしっかりと感じられる。

現在は使われていない煙突だが、古き良き銭湯を思い出させる

さらに水風呂脇の階段を数段降りると、外気浴スペースがある。椅子が並ぶその空間からは空と、現在は使われていない「黄金湯」の煙突を見上げることができる。

都市の真ん中にありながら、風と空を感じながら休めるこの外気浴は、黄金湯の大きな魅力のひとつだ。

番台バーで飲む、湯上がりのクラフトビール

番台バー

サウナ後は、番台バーへ。

黄金湯では、自社醸造所「BATHE YOTSUME BREWERY」(ベイズ ヨツメ ブルワリー)で製造されたクラフトビールが提供されている。

ドリンクメニュー

この日つながっていたのは以下の4液種。

  • ととのうケルシュ(Smoked Kölsch-style Ale)5%

  • SUNRISE(Pale Ale)5%

  • トワイライト(Session IPA)5%

  • よもぎセゾン(Wheat Saison w/Yomogi)5%

この中から、「ととのうケルシュ」と「トワイライト」をいただいた。

ととのうケルシュ(Smoked Kölsch-style Ale)5%

壁際には小さなテーブルスペースが設けられ、番台や天井を眺めながらゆっくりとビールを楽しめる。また、外には木製ベンチも置かれており、風にあたりながら飲むのも心地よい時間だ。番台バーにはDJブースも設置されていた。

壁に備え付けられたテーブル

かつて銭湯が担っていた“人が集まる場所”という役割を、現代的な形で再編集している。その感覚が、この空間にはある。

醸造所まで歩いてつながる銭湯体験

BATHE YOTSUME BREWERY 外観

せっかくなら、黄金湯から徒歩10分ほどの場所にあるBATHE YOTSUME BREWERYにも立ち寄りたい。

ガラス越しに見える銀色の醸造タンクを眺めながら店内へ進むと、壁面に10タップが並ぶ。

注文カウンター

席数は25席ほど。落ち着いた空間の中で、醸造所ならではの距離感でビールを楽しむことができる。

店内の様子

この日つながっていたのは以下の9液種。

  • SUNRISE(Pale Ale)5%

  • SHOWER(IPA)7%

  • FOREST(Weizen)3.7%

  • SQUALL(Hazy IPA)6%

  • よもぎセゾン(Wheat Saison w/Yomogi)5%

  • チェリーチョコポーター(Fruit Porter)5%

  • ととのうケルシュ(Smoked Kölsch-style Ale)5%

  • ハレノヒエール(Session IPA)5%

  • FIVE(Anniversary IPA)6%

サウナ直後に番台バーで飲むのも良いが、少し歩いて、醸造タンクを眺めながら飲む時間もまた格別だ。

この日はこの中から、「SHOWER」と「ハレノヒエール」をいただいた。

SHOWER(IPA)7%

銭湯とクラフトビール、その完成形のひとつ

飲みながら天井を見上げた時の風景

近年、“サウナとクラフトビール”を組み合わせた施設は増えてきた。ただ黄金湯が特別なのは、単にサウナ後にビールが飲めることではない。建築、アート、街、銭湯文化、そして醸造所までが一つの流れとしてつながっていることだ。

サウナで温まり、水風呂で身体を冷やし、外気浴で空を見上げる。そして、その延長線上にクラフトビールがある。

黄金湯は、その体験を極めて自然な形で成立させている。


【施設概要】
黄金湯(コガネユ)
住所:東京都墨田区太平4丁目14−6
アクセス:JR錦糸町駅(北口)より徒歩6分
営業時間:平日・土日祝 6:00-9:00 / 11:00-24:30
定休日:第二・第四月曜日
※水曜のみ男女入れ替え日

《BEERMAPS編集部》