沖縄県那覇市壺屋にある「MAHOWBREW(マホウブリュー)」は、2024年6月に酒類製造免許を取得した、新進気鋭のクラフトビール醸造所です。タップルームが併設されているため、醸造の様子を眺めながらクラフトビールを楽しめます。
沖縄の焼き物(やちむん)発祥の地であり、古くからクラフトの精神が根付く場所・壺屋エリアで醸造所を営む彼らは一体どのようなポリシーを持ち、クラフトビールを造っているのでしょうか。
今回は、「MAHOWBREW」の代表・面川達郎さんに、Webメディア初のインタビューを受けていただきました!オープン前のエピソードからビールづくりのこだわり、今後の展望まで、たっぷりとお届けします。
サンドイッチ店から始まったクラフトビールブルワリー「MAHOWBREW」

——面川さんは、いつから沖縄に住んでいるのですか?
面川さん:大学卒業後の8年前に、沖縄に移住しました。大学在学中にスクーターで日本中を旅していたときに、沖縄の文化・食事・気候に惹かれたことがきっかけです。
——なぜブルワリーをつくろうと思ったのでしょうか?
面川さん:もともとクラフトビールが好きだったので、日本中を旅しながら各地のクラフトビールを飲んでいました。そこでクラフトビールの美味しさを改めて実感したとともに、「大企業ではない小さな醸造所でも、ビールがつくれる」ということに感動し、「いつか自分でクラフトビールをつくりたい」と思ったことを覚えています。
——「MAHOWBREW」誕生のきっかけを教えてください。
面川さん:ビールづくりを志して動き出した当時はコロナ禍だったので、まずは沖縄で「Witch’s」というサンドイッチ店を始めました。同時に沖縄県内のブルワリーで半年ほど働き、知識や経験を積みました。そこで出会ったのが、現在「MAHOWBREW」のヘッドブルワーを担っている栁です。
栁とビール片手に餃子を食べながら、「自分たちの手で理想のブルワリーをつくろう」と決意し、そこから約2年かけて本格的に準備を進めました。
——どのような形で準備を進めたのですか?
面川さん:「Witch’s」の店舗を改装して「MAHOWBREW」を作り上げたのですが、融資の申請から設備の輸入、搬入・設置、改装・配管工事に至るまで、すべて自分たちで行いました。

とくに大変だったことは、タンクやビール缶充填機などの設備の輸入です。見積もりをはじめとする販売元とのやり取りや、設備のカスタマイズ、税関や検疫所の手続きも、メーカーを通さず自分たちだけで取り組んだので、これだけで1年ほどかかりましたね。
長い時間と手間がかかった分、一つひとつの工程に強い想いを込めることができたので、結果的には良い選択だったと思います。

約2年かけた準備を経て、無事に「MAHOWBREW」をオープンできたときは、「ようやく始められる!」「早くクラフトビールをつくってみんなに届けたい!」という気持ちでいっぱいでした。勢いそのままに、酒類製造免許を取得してからの2か月間で7種類のクラフトビールを醸造し、リリースパーティーでお披露目しました。
「MAHOWBREW」に込めた想いと、予想外のネーミング経緯

——「MAHOWBREW」のネーミングには、どのような想いが込められていますか?
面川さん:サンドイッチ店の名前が「Witch’s(魔女)」だったので、そこから繋がって「MAHOW(魔法)」と名付けました。「魔法のような、自由で楽しいビールをつくりたい」という想いを込めていて、今ではこの“MAHOW”という言葉が、私たちの精神そのものになっていると感じます。
——サンドイッチ(Sand ”wich”)のお店だから、「Witch’s」に?
面川さん:実は、サンドイッチ店の名前「Witch’s」は、スペルミスから生まれたんです(笑)
はじめはシンプルに、Sandwichから取って「Wich’s」にするつもりでした。あるイベントでキューバサンドを販売する際に、看板に英語で「Cuban sandwich」と書いたつもりが、「Cuban sandwi ”t” ch」になっていて。それを見た知り合いのイタリア人に、「”キューバの砂の魔女”になってるよ!」と言われ、そのままの流れで店名も「Witch’s」にしました。
そこからMAHOW(魔法)が連想できたので、スペルミスも今に繋がっているということで......!
——スペルミスは予想外でした(笑) お店づくりのこだわりはありますか?
面川さん:タップルームのカウンターの真後ろに醸造所のタンクを配置して、お客さんがガラス越しにタンクを眺めながらビールを楽しめるようにしています。

また、いつ来ても10タップ以上のオリジナルビールが飲める状態にしているところも、こだわりです。最大15タップになるので、ブルーパブにしてはタップ数が多いと思います。
——タップルームはどのような雰囲気ですか?
面川さん:沖縄の風土なのか、お客さん同士がすぐに仲良くなります!「いろんな人に出会えて一緒に盛り上がれる、アットホームな空気感が楽しい」と、県外から来てくれる人もいます。
飲みやすいビールも用意しているので、ビールを飲み始めたばかりの若い人を含めて、幅広い人に来てもらえたら嬉しいです。
面白さや楽しさ、自由な発想を形にするビールづくり

——ビールづくりで大切にしていることを教えてください。
面川さん:一番大切にしているのは、「やりたいことを純粋にやること」です。面白さや楽しさ、自由な発想を形にする。そんな想いをビールに込めています。
市場の流行やコストを過剰に意識しすぎず、自分たちが本当に面白いと思えるビールをつくることを優先していますね。「本当に良いものを真剣につくれば、それを理解してくれる人は必ずいる」と信じて、クラフトビールの価値である個性と挑戦を大事にしています。
——原材料の選び方やレシピにこだわりはありますか?
面川さん:来店する人にクラフトビールの面白さを感じてほしいので、幅広い原料を使い、ホッピーなビールからフルーツビール、ラガーまで多様なスタイルをつくることを意識しています。酵母の種類にも幅を持たせているのですが、これは珍しいことなのだと最近知りました。

レシピづくりを担当するヘッドブルワーの栁は、現状に満足せず、他のブルワリーのビールの研究も欠かさずに、新たなインプットと発見を重ねています。彼の創造性と、ビールへの情熱は、一緒に働くなかで尊敬しているところです。
——今までに何種類のクラフトビールをつくりましたか?
面川さん:「MAHOWBREW」のオープンから1年半で、40種類ほどつくりました。「さまざまなクラフトビールをつくろう」という方針で、毎月新しいビールを生み出しています。
——多様なビールを展開するなかで「MAHOWBREWといえばコレ!」というものはありますか?
面川さん:”Gose(ゴーゼ)”は、多くの人が飲んでくれていると思います。沖縄の塩とコリアンダーを入れ、乳酸菌発酵させて、最後にたくさんのフルーツを投入するシリーズです。パッションフルーツやマンゴー、シークワーサー、ライチ、スイカ、いちご、チェリー、カラキ(沖縄のシナモン)、島唐辛子など、沖縄の素材を必ず一つ以上使っています。また、Imperial Goseの”Ophelia(オフィーリア)”をはじめ、度数7.5%~10%ほどのハイアルコールビールが多いです。
——ビールの名前が個性的ですよね。
面川さん:完成したビールの味わいや特徴に合わせて、名前を考えています。柳がメタル好きなので、メタル・神話・魔法あたりの世界観からネーミングのアイデアを得ることが多いです。

名前が長かったり、読み方が難しかったりするので、お客さんから「読めないよ~!」と言われることもよくあります(笑)
——缶のラベルにもこだわりがあるとうかがいました。

面川さん:はい。ラベルの原画はすべて革でデザインされていて、それをデータ化してラベリングしています。独創性の高いデザインながら、実はビールのスタイルごとに統一感を持たせています。

デザインを依頼しているのは、沖縄県那覇市の革職人SLEAK(渡辺翔馬氏)です。彼は幼稚園からの同級生で、沖縄に一緒に移住してきました。
地域とジャンルの垣根を越え、クラフトビールの魅力を多くの人に伝える

——今までで、印象に残っているお客さんとのエピソードはありますか?
面川さん:週4くらいで来てくれる30代の常連さんが、1周年イベントのビンゴ大会で「1か月毎日1杯無料券」を見事に当てたことは印象に残っていますね。次の日から1か月間、本当に毎日来てくれて驚きました(笑)
また、大阪のビールイベントに出店した際に来てくれた方が、”Ophelia”を飲んでクラフトビールにハマり、そこからビアジャッジの資格を取得して、現在は自分でブルワリーを立ち上げるために動かれているそうです。うちのビールがきっかけで、「ビールをつくりたい」とまで思ってくれたことが、すごく嬉しかったです。
——今後どのようなブルワリーにしていきたいですか?
面川さん:全国・世界から沖縄に人が集まるようなブルワリーにしていきたいです。それが沖縄への地域貢献にも繋がると思っています。「MAHOWBREW」という名前をもっと広く知ってもらうために、現在は県外のビールイベントにも積極的に出店しています。
製造量も少しずつ拡大していきたいですが、ただ規模を追うのではなく、「面白く、挑戦的で、わがままなビール」をつくり続けられるサイズ感を保つことが理想です。木樽でのビールづくりにも挑戦したいです。
また、他ジャンルの第一線で活躍する方々とのコラボレーションにも取り組んでいます。この活動を通して、クラフトビールの魅力をより多くの人に伝えることができ、沖縄の文化や感性もさらに広がっていくことを願っています。
——直近では、どのようなコラボレーションがありましたか?

面川さん:MONGOL800のキヨサクさんとのコラボレーションビール「Party -GINGER GOSE-」を11月にリリースし、EC小売販売分は即完売しました。沖縄県産の生姜、名護市・渡具知農園のカラキと月桃、さらにキヨサクさんプロデュースのラム「Party -TROPICAL RUM-」を贅沢に使用したImperial Goseです。
また、沖縄のチョコレート専門店「TIMELESS CHOCOLATE」とのコラボレーションビールが、2026年2月にリリース予定です。カカオハスクを使用した、Imperial Stoutをつくっています。
——最後に、読者に向けてメッセージをお願いします!
面川さん:クラフトビールは「自由で楽しい」、まるで魔法みたいなものです。「MAHOWBREW」のビールが、クラフトビールにハマるきっかけの一杯になれたらと思います。
全国的には、「MAHOWBREW」のビールを飲める場所はまだまだ限られているので、ぜひ沖縄にいらしてください!
私は、大体いつもタップルームにいますのでぜひ「カリー(乾杯)」しましょう!
ネットでの取り寄せ可能!「MAHOWBREW」のクラフトビールをご紹介
面川さんへのインタビュー後、編集部が「MAHOWBREW」の個性光るクラフトビールを取り寄せ、自宅で飲んでみました!
Ophelia(オフィーリア)

インタビュー内でも何度か名前が上がった、「MAHOWBREWといえばコレ!」の一杯。名護市産シークワーサー果汁、屋我地島産海塩、パッションフルーツ・マンゴーピューレ・グアバピューレを贅沢に使用。
シークワーサーの爽やかな酸味を、マンゴーとパッションフルーツの甘い香りが包み込み、アルコール度数7.5%ながらトロピカルジュースのような味わいです!
スタイル:Imperial Gose
アルコール度数:7.5%
IBU:12
Crimson Catchment Chronicle(クリムゾンキャッチメントクロニクル)

県産・無農薬紅茶の栽培と加工を、沖縄県名護市で70年近く続ける、金川製茶の紅茶専用品種「べにふうき」を取り入れた一杯。
赤褐色の見た目や、ほのかな甘さと渋みに、たしかな紅茶の気配を感じられます。炭酸とアルコール感は控えめで、瑞々しくスッキリとした後味。
スタイル:Irish Red Ale
アルコール度数:4.5%
IBU:20
Hammer Krushed Brain – Fresh Hop Beyond the Pacific ver.

好評を博した伊勢角屋麦酒とのコラボレーションビール「Hammer Krushed Brain」をベースに、さらなる進化を遂げた一杯。2回目のドライホップに、フレッシュホップのStrata(ストラタ)を贅沢に使用。
ジューシーな柑橘系の香りが広がり、ひと口飲むと爽やかな苦みを感じる。ハイアルコールならではの甘みとともに体温が上がる、まさにKrushed BrainなTriple IPA。
スタイル:Triple IPA
アルコール度数:10.0%
IBU:80
カリー(乾杯)の輪が広がる!「MAHOWBREW」の今後に注目

個性豊かなクラフトビールを次々に醸造する「MAHOWBREW」。沖縄の明るい人たちや暖かな気候が、クラフトビールをより美味しく、カリー(乾杯)をより楽しいものにしてくれます。
クラフトビール好きであれば沖縄を訪れる際には、ぜひ「MAHOWBREW」を訪れてみてください!
「なかなか沖縄に行けない......」という人には、缶ビールやオリジナルグラスを購入できるオンラインストアもおすすめです。
編集部は今後も、気になるブルワリーを追いかけていきます。お楽しみに!
店舗情報
店舗名:MAHOWBREW
住所:沖縄県那覇市壺屋2-4-3
アクセス:ゆいレール「安里」駅徒歩8分
タップルーム営業時間:平日18:00~23:00/土日15:00~23:00
定休日:火曜日
支払い:現金・クレジットカード・電子マネー・QRコード
公式HP:https://mahowbrew.com/
Instagram:https://www.instagram.com/mahowbrew/
オンラインストア:https://shop.mahowbrew.com/








