横須賀の街に吹くクラフトビールの風!『GRANDLINE BREWING』が進む“偉大なる航路”

横須賀の街に吹くクラフトビールの風!『GRANDLINE BREWING』が進む“偉大なる航路”
  • 横須賀の街に吹くクラフトビールの風!『GRANDLINE BREWING』が進む“偉大なる航路”
  • 横須賀の街に吹くクラフトビールの風!『GRANDLINE BREWING』が進む“偉大なる航路”
  • 横須賀の街に吹くクラフトビールの風!『GRANDLINE BREWING』が進む“偉大なる航路”
  • 横須賀の街に吹くクラフトビールの風!『GRANDLINE BREWING』が進む“偉大なる航路”
  • 横須賀の街に吹くクラフトビールの風!『GRANDLINE BREWING』が進む“偉大なる航路”
  • 横須賀の街に吹くクラフトビールの風!『GRANDLINE BREWING』が進む“偉大なる航路”
  • 横須賀の街に吹くクラフトビールの風!『GRANDLINE BREWING』が進む“偉大なる航路”
  • 横須賀の街に吹くクラフトビールの風!『GRANDLINE BREWING』が進む“偉大なる航路”

基地があることから、米軍関係者も含めた外国人の居住者が多いことで知られる街・横須賀。日本文化とアメリカ文化が融合し、独特な異国情緒を感じさせるこのエリアにオープンして以来、地元住民たちからも愛されているブルワリー&タップルームが『GRANDLINE BREWING(グランドライン ブルーイング)』です。

2023年10月にオープンした『GRANDLINE BREWING』。店外に置かれたアウトドアチェアに座り、ゆったりと潮風を感じながら味わうクラフトビールは格別。

オープンで開放的な佇まいの店舗。店内での立ち飲みはもちろん、店前に用意されたアウトドアチェアでチルな外飲みを楽しむことができる雰囲気は、さながらアメリカ西海岸。カリフォルニアやサンディエゴといったクラフトビールの聖地にあるブルーパブを想わせます。

周辺に住む外国人の来店も非常に多く、1杯だけ飲んでササっと帰宅する人、ボトルや缶のテイクアウトだけする人、複数人で待ち合わせて外の席で乾杯する人。利用目的は多種多様。訪れている人々をみていると、まさに横須賀のミックスカルチャーがぎゅっと詰まったかのようなタップルームなんだなと感じました。

今回はそんな『GRANDLINE BREWING』のブレインともいえる2人のキーパーソンをインタビュー。横須賀の街からはじまる、“偉大なる航路”についてうかがってきました。

異業種から飛びこむクラフトビールの世界!『GRANDLINE BREWING』誕生ストーリー

溢れんばかりのビール愛を語ってくれた、『GRANDLINE BREWING』代表の大西隼人さん。

『GRANDLINE BREWING』を運営するのは、株式会社ステイハングリー。2014年に創業した広告代理店です。広告代理店とクラフトビールの事業。一見相容れない業種にみられる2つだが、参入を決めたのはベンチャー魂と純粋な興味からだったと社長の大西隼人さんは語ります。

大西さん:「大前提として、お酒が好きでビールをよく飲むという部分がありました。色々と学んでいくことでよりビールの面白さを知り、クラフトビール沼にハマっていったんです」

コロナ禍で世の中が停滞しているタイミングも重なり、ジャパンビアソムリエ・ビア検といった資格なども取得。勉強している際に、ビール業界の方々と多くの繋がりをもったこともクラフトビールへの興味関心がより増した影響としてあったのだそう。そんな中、会社として新たな事業を立ち上げる際にテーマとして掲げていた1つが“食”だったと言います。

「食をテーマにしていたのは、今後も絶対になくならない分野であるから。その中で自分が興味のあるお酒、特にクラフトビールとの出会いがきっかけでブルワリーを立ち上げようと考えました」と大西さん。

自身が楽しむことと、プレイヤーになる感覚“は違うことを理解しながらも、まずはやってみよう”というベンチャーらしい挑戦的な気持ちでこの業界に参入することを決めました。

足を運んで魅了されたアメリカ×日本のミックスカルチャー。横須賀の街ではじまった“偉大なる航路”

ローカル文化とも密接な関係を持っているクラフトビール。ブルワリーを立ち上げる上で大切な立地として横須賀を選んだのにも理由があります。

大西さん:「たまたま横須賀の方々と関わりを持つ機会があり、自分の足で街を歩いた時にすごく魅力的なカルチャーが根付いているなと感じたんです。海・山といった自然と街が共存していますし、基地がある影響から外国人の方もたくさんいてアメリカの空気感も感じられますよね。これらは東京には感じられない部分ですし、日本ではなかなかこの雰囲気はないんじゃないですかね」

マーケティングの側面に加え、横須賀の独特の空気感、さらにはブルワリーの主軸として製造していきたい「(American)IPA」というスタイルが街にフィットするのではないかと考えこの場所にブルワリーを作ることを決意したのだそう。

ブルワリーの場所として選んだのは、横須賀中央駅から徒歩12分ほどの場所にあった、ラーメン店の跡地。自らで物件をスケルトン化し、1から設計し直して理想を詰め込んでいきました。

オープンウィンドウになっているため、天気のいい日はより開放的でチルな時間を楽しめそう。

ネーミングである『GRANDLINE BREWING』の由来はと尋ねてみると

大西さん:「パッと浮かんだ横文字ではあるんですが、やっぱり横須賀は軍、港の街というイメージがあるからインスピレーションが浮かんだんですかね。“出発・航海”みたいなニュアンスを含んでいます。あとは、“次元をこえる、地域を超えて愛される”といった想いも込められていますね」

とハニカミながら『GRANDLINE BREWING』(偉大なる航路)という名前への想いを語ってくれました。

29歳ながら経験豊富な醸造長との出会いがブルワリー設立をより加速させた

『GRANDLINE BREWING』の醸造長・立花薫さん。コロラド州立大学で醸造学を学んだ後に、フォートジョージブルワリーで勤務するなど海外経験も豊富。

醸造長を務める立花さんは29歳ながら経験豊富なブルワー。アメリカの大学で理系分野を学んだ後に、編入でビール専門の発酵学を専攻したのだそう。

立花さん:「元々はビールと関係なしにアメリカの大学に行くことになったのですが、現地で過ごしているうちにクラフトビールにハマったんです。周辺のビールを買い漁っては飲み比べる、いわゆるビアギークでした。そこから、ビール専門の発酵学があることを知って本格的に勉強することになりました」

バーの奥にある醸造所でビールを仕込んでいる立花さん。

卒業後、立花さんは、アメリカでブルワーとして就職を果たしたものの世界的なコロナのパンデミックが発生した時期(2020年初頭)と重なり、やむなく日本に帰国することとなります。帰国後、宮城県・気仙沼の『BLACK TIDE BREWING』で醸造を行っていた立花さんだが、退職するタイミングで声をかけたのが大西さんでした。

大西さん:「『BLACK TIDE BREWING』は元々好きなブルワリーの1つでした。そこで、若手のブルワーが辞めるという話を小耳に挟んで。もちろん、直接的な面識はありませんのでネットを介してメッセージを送りました」

と微笑む大西さん。SNSで立花さんの発信をみていた大西さんがDMを送ったことがきっかけで、まだ計画段階だったブルワリーに誘ったといいます。

大西さんとの出会いはSNSがきっかけ。「いわゆるネットナンパですよ(笑)」と微笑みながら当時を振り返る立花さん。

そこから、横須賀の醸造所が設立するまでお互いにコミュニケーション取りつつ業界のことを学んでいった大西さん。コロナ禍でブルワリーの数が爆発的に増えたタイミングだったこともあり、業界からの風当たりも強かったのだそう。

「色んな人に話を聞きに行きましたが『大変だからやめとけ』と門前払いされることも多々ありましたよ。確かに普通に考えれば、何者でもない素人ですから愛を持って言ってくださったとは思っています。ただ、逆に『やってやろう!!』という気持ちが強くなりました」と2人は当時を振り返ります。

国内最大級の審査会で金賞も受賞!魅力あふれるビールの数々をご紹介

定番の銘柄も徐々にブラッシュアップしていくのが『GRANDLINE BREWING』のスタイル。フラッグシップともいえる「Hello,World」は最近ラベルを刷新、「Crypto Beer」シリーズは現在#03が発売中。

そして2023年、紆余曲折を経て立ち上げた『GRANDLINE BREWING』。IPAを主体にしながら、大西さんと立花さんがディスカッションを重ねて作り上げるビールは、業界からも徐々に評価を受けはじめます。

限定リリースの缶商品も多数。訪れるたびに新しいビールと出会えるのもタップルーム兼ボトルショップの魅力。

2025年2月に開催されたJapan Great Beer Awardsでは、出品した4液種全てでメダルを獲得。そのうち2種は金賞という快挙を成し遂げました。さらにThe International Beer Cup 2025でもhazy strong pale ale部門にて、「THE SECOND GRANDLINE」が中国とアメリカのブルワリーを跳ね除け金賞。

Free-Style High-Alcohol Light Ale部門では、テキーラカクテルの代表格パロマ×サワーエールを融合させた個性派の1杯「SALUD AMIGOS!」が銅賞を獲得するなど、2025年は『GRANDLINE BREWING』大きく躍進した1年になったと言えそうです。

ビール醸造に加え、タップルームでの接客も行なう立花さん。ビールのコンディションを考え、ガス圧などにも気を配りながらの適切なサーブをします。

大西さん:「様々な方の目に触れる良い機会になったと思います。品評会での受賞がきっかけで、これまでお付き合いがなかったビアバーさんからのオーダーも入るようになりましたし、やはり権威ある品評会で受賞できたことは純粋に嬉しいです」

今回は、取材当日タップに繋がっていたものや、瓶で販売しているものをいくつか試飲させてもらいました。

Hello, World 2025

ホップ由来のパッションフルーツ、マンゴー、オレンジといったトロピカルなアロマが濃密に感じられるHazy。ネクタージュースのようなジューシー感もあるドリンカブルなビールながら、アルコール度数は8%。力強さと飲みやすさを両立させた1杯。

名前:Hello, World 2025
スタイル:Hazy Double IPA
アルコール度数:8.0%
使用ホップ:Citra, Amarillo

Only Impact

10年前のWest Coast IPAをイメージしたという、クラシックスタイルにリスペクトを込めて造られた1本。口当たりをあえてクリーンにしすぎないことで、“ビターフリーク”に届くようなインパクトある飲み応えを実現。アメリカンクラフト好きにこそ刺さりそうな、どこか懐かしい味わい。

名前:Only Impact
スタイル:Sugo-Niga IPA
アルコール度数:7.0%
使用ホップ:Simco, Columbus, Cascade, Amarillo, Centennial

Genuine Geeks

色味からも伝わる“濁り系”IPA。シトラ&モザイクを贅沢に使用した濃厚なトロピカルフレーバーは、まさに“ホップのご馳走”。ヘイジー好きは飲んでおきたい、甘くてウマい至福の1杯。提供されているグラスは日本初のクラフトビール専門グラスブランド「Geek Glass Tokyo」の物。華やかな香りを余すことなく楽しむ、クラフトビール好きのためのデザイン。

名前:Genuine Geeks
スタイル:DDH Hazy Double IPA
アルコール度数:8.0%
使用ホップ:Mosaic, Citra

THE SECOND GRANDLINE

2周年を記念して醸造された限定品。ホップの魅力を余すことなく詰め込んだヘイジーIPAは、濃厚なのに飲後は非常にクリーンに感じる不思議な1杯。濃厚さと切れ味を兼ね備えているため、飲むシーンを選ばない“無限”に乾杯できる味わい。

名前:THE SECOND GRANDLINE
スタイル:Unlimited Hazy IPA
アルコール度数:6.0%
使用ホップ:Nelson Sauvin, Motueka, Citra

企業や地元ゆかりの人物など、幅広いジャンルのコラボビールも魅力的

定番ビールの他、コラボビールも数多くリリースしている『GRANDLINE BREWING』。わかさ生活とのコラボレーションビール「ブルブル」はJapan Great Beer Awardsにて銅賞を獲得するなど、話題性だけでなく味わいにも定評があります。

大西さん:「こういったコラボを定期的にできるのも、立花がいることが大きいと思います。色んなディスカッションする中で、もちろん無茶振りすることもあるんですよ(笑)ただ、自分の個性だけじゃなく求められた答えをしっかりと出す、プロの造り手として柔軟にアイディアを詰め込んでくれるのが彼の魅力だと思います」

立花さん:「『こういうものしか造りません』っていう確固たるブルワーの意思があって個性が強いのもブランドの魅力の1つだと思います。ただ僕の場合、自分視点だけのビールは造りたくないというか。結局、自分が提案するだけじゃどうしても偏りがでちゃうんで。社内でのディスカッションもそうですし、コラボビールでも求められている味わいや正解がどういうものかを考えて設計できるのが強みだと思います」

今後も、個性的なコラボレーションビールの数々が生まれていきそうです。

3年目に突入した“航海——クラフトビール×カルチャーで“乾杯の新時代”へ

2025年10月に2周年を迎えた『GRANDLINE BREWING』。周年を祝って開催されたイベント【『GRANDLINE BREWING』 2nd Anniversary “KANPAI YOKOSUKA”】は多くのクラフトビールファンや地元住民、業界関係者など、連日100名を超えるゲストが集結。大盛況をおさめました。改めて、3年目を迎えるにあたり、今後ブルワリーとしてどのような動きをしていきたいのかを伺いました。

大西さん:「立ち上げの時から想っていることは、ビールと他のカルチャーを繋ぎ合わせて、よりクラフトビールの裾野を広げていきたいということですね」

これまでも数多く実施しているコラボレーションですが、実はブルワリー同士で行ったことがないのは、ビール×カルチャーをかけあわせ幅広い方々にクラフトビールの魅力を感じてほしいから。また、自社で企画・運営を行うイベントを多数行い発信を行なっているのも、こういった理想があるからこその活動なのだそう。今後も、異なるジャンルや業界の垣根を超えたコラボを精力的に行っていく予定だと話します。

大西さん:「また、3年目の誓いとして。よりビールにストイックになっていきたいと思っています。2年間走り続けて、スタッフも増えていく中でより議論が生まれるようになりました。色んな意見を交わしながら、よりクリエイティブなビールを世に送り出したいですし、定番の商品もブラッシュアップしていきたいです。また、横須賀の魅力を外部に広く発信していくことも我々の役目だと考えていますので、これまで同様しっかりと行っていきます」

異業種からクラフトビールの世界に飛び込み、徐々に速度を上げながら次なる野望に向かっている『GRANDLINE BREWING』。今後、彼らがどのような“航路”を進んでいくのかが楽しみです。

店舗詳細

店舗名:『GRANDLINE BREWING(グランドライン ブルーイング)』
住所:〒238-0004 神奈川県横須賀市小川町23−1 フドウ横須賀三笠ハイツ 102
アクセス:京急本線「横須賀中央駅」徒歩12分
電話番号:046-854-5726
営業時間:12:00~19:00
定休日:不定休(SNSにて発信)
URL:https://grandlinebrewing.jp/
Instagram:https://www.instagram.com/grandline_brewing/
X(旧Twitter):https://x.com/grandline_beer
TikTok:https://www.tiktok.com/@grandline_brewing

《BEERMAPS編集部》